解雇283 配転命令の有効性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、試用期間の再延長が否定され、配転命令拒否等による解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

F社事件(神戸地裁平成30年7月20日・労経速2359号16頁)

【事案の概要】

本件は、原告が本件解雇は無効であると主張して地位確認等を求めるとともに、Y社による本件自宅勤務命令、徳島本社への配転命令、本件解雇はいずれも違法であると主張して不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは平成28年2月25日からY社において勤務を始め、徳島本社で研修を受けた後、4月14日から関西支社勤務となり、資産形成事業部関西営業課に配属されたが、5月13日に本件自宅勤務命令を受け、以後その状態が続いていた。そして調査の結果、関西営業課において業務に従事していた際のXの営業活動に業務フロー違反があったことが発覚しており、また、Cと結託してE取締役の意向に沿わない営業活動を行っていたことも疑われる状況にあった。Y社は、延長された試用期間の満了にあわせて本件自宅勤務命令を解除することとしたが、このような状況で、8月25日以降、Xをもとの関西営業課で勤務させることはできないと判断し、用地仕入業務に従事させることとするとともに、徳島本社において改めて研修を受けさせることにしたというのである。
認定事実によれば、このY社の判断を基礎づける事実が実際にあったから、本件配転命令には必要性があったといえるし、不当な動機・目的によって行われたものともいえない。これによってXが特に不利益を被るという事情も認められない。したがって本件配転命令が業務命令権の濫用とされることはなく、有効である。

2 本件配転命令は有効であるからXは平成28年8月25日以降徳島本社で勤務する義務を負ったが、本件解雇のあった9月5日まで1日も出勤しなかった。・・・しかもXは8月28日、「(本件配転命令によって)労働契約は終了ということになる、解雇になったと認識していいか」などのメッセージをD取締役に送信している。このことからすると、Xは遅くとも9月2日までに、本件配転命令を拒否する意思を明確にY社に表明したと認められる。
指定された勤務場所で勤務する意思がないことを従業員が表明するということは、就労の意思を放棄するにも等しいことであり、労働契約上の義務の重大な違反である。Y社の就業規則においても配転命令は「重要な職務命令」と位置づけられている(就業規則71条1項16号)。一方、本件配転命令に従わないことについて正当な理由は認められないし、特に酌むべき事情も認められない。
このように重大な義務違反である本件配転命令の拒否があったことに加え、秘密漏洩行為、業務フロー違反行為もあったのであるから、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないということはできない。本件解雇に権利の濫用はなく、有効である。

配転命令について不当な動機目的(例えば、退職に追い込むためなど)に基づくものではないということをいかに立証するかがポイントとなります。

上記判例のポイント1のような流れが裏づけとともに主張できると有効と判断してもらえます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。