Daily Archives: 2018年11月8日

不当労働行為206 組合員に対する残業禁止と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組に加入し、自らの労働条件を明らかにするよう求めたXに対し、残業を行わないよう指示し、固定残業代である業績時間外手当を不支給にしたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

ケミサプライ・アマックス(残業差別)事件(福岡県労委平成30年7月30日・労判1185号89頁)

【事案の概要】

本件は、労組に加入し、自らの労働条件を明らかにするよう求めたXに対し、残業を行わないよう指示し、固定残業代である業績時間外手当を不支給にしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 28年7月頃、Xは業務の状況にかかわらず18時までには退勤するように指示されただけでなく、29年5月頃からは、残業を一切しないように指示されたが、他の従業員はそのような指示を受けておらず、Xが退勤する際にも業務を続けていたことが認められる
したがって、Y社はXに対し、残業指示について非組合員と異なる差別的取扱いを行ったものといえる。

2 そもそも「業務時間外手当」は、賃金規程で定められ、Xの賃金の一部を構成するものであり、その支給を一方的に停止することは、労組法7条1号にいう「不利益な取扱い」であったと認められる。
Y社は、Xに対する29年5月分給与以降の「業務時間外手当」の支給を停止したが、この会社の行為は、団交に出席し、当労働委員会への救済申立てにも関わり、さらに、自身についての時間外手当に係る本件労働審判を申し立てるなどの組合活動を行うXに対して、それまでは行っていた残業指示をしないことで「普通残業手当」の支給を受けられないという経済的不利益を与えることに加え、さらに「業務時間外手当」を支給しないことで困窮させようとする意図で行われたものと解さざるを得ないのであり、Y社は、Xのこのような組合活動を嫌悪した上で「不利益取扱い」を行ったものといえる。

これだけわかりやすいと不当労働行為と判断されても仕方ありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。