おはようございます。
今日は、約19年間更新を繰り返した教諭に対する雇止めの適法性に関する裁判例を見てみましょう。
公益財団法人東京横浜独逸学園事件(横浜地裁平成29年11月28日・労判1184号21頁)
【事案の概要】
本件は、公益財団法人であるY社が設立、運営する在外ドイツ学校たるA学園に雇用され、契約の更新を経て主にB語の教諭として本件学園に勤務していたXが、Y社により平成27年8月以降の雇用契約の更新がなされず、雇止めを受けたことにつき、Xには労働契約法19条1号又は2号の適用があり、上記雇止めは客観的合理的理由を欠き、社会通念上不相当であるから無効であるとして、Y社における労働契約上の権利を有する地位の確認並びに雇止めがなされた平成27年8月以降の賃金+賞与+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
雇止めは無効
【判例のポイント】
1 ・・・契約更新に関する契約書について、その作成の有無は不明であるものの、それ以外の契約の締結及び更新については契約書を交わし、更新に当たっては、更新の希望の有無や希望する担当時間数等を記載した書面を提出していたことなどからすれば、更新の手続が形骸化していたとまではいえない。
以上から、本件において、Y社がXとの労働契約を締結しなかったことが、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できるとまでは認められず、Xに対する本件雇止めが労契法19条1号に該当するとは認められない。
しかしながら、XとY社は、上記のとおり、約19年間という長期にわたり、合計12回という多数回の契約更新を行ったこと、XがY社における基幹的な労務に従事しており、長期における契約更新も想定されていたことからすると、Xにおいて、XとY社との労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められ、しかも、その期待は相当高度なものであったと認められる。
・・・以上から、Xに対する本件雇止めについては労契法19条2号が適用され、同雇止めには客観的合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要となる。
2 Y社は、Xとの雇用契約においては、所定労働時間が決まっていないから、民法536条2項の適用はないと主張するが、その趣旨が、Xが同条項で失わない反対給付が特定できないというのであれば、上記認定説示の範囲では、その蓋然性が認められるから、Y社の上記主張は採用できない。また、Y社の上記主張が、同条項の適用要件として所定労働時間が決まっていることを要件とするという趣旨であるとすれば、同項にはそのような限定を付す根拠となるような文言は存在しない上、同項が、本来は債務の履行ができず、反対給付を受けられないところ、債権者の責めに帰すべき事由がある場合に例外的にその反対給付を受けることができることとした趣旨からいって、同項の適用が必ずしも所定労働時間が定めっている場合に限定されるものではないことは明らかであるから、Y社の当該主張はやはり採用することができない。
19年間という相当長期にわたる有期雇用であっても、契約更新手続が形骸化していない場合には、2号事案になるという典型例です。
あとは、合理的理由の有無の判断となります。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。