有期労働契約80 3年の更新上限規定に基づく雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、3年の更新上限の規定に基づく雇止めが有効とされた裁判例を見てみましょう。

高知県公立大学法人事件(高知地裁平成30年3月6日・労経速2348号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で平成25年4月1日に1年間の雇用契約を締結し、その後、2回にわたり同期間の雇用契約を更新したXが、Y社が平成28年4月1日以降は契約を更新しなかったことについて,、労働契約法19条に基づき、契約が更新されたと主張して、Y社に対し、Xが雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同月分以降本判決確定日までの給与及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、その就業規則において、契約職員の雇用期間は1会計年度とし、更新による通算雇用期間の上限を3年とする明確な定めを置いている
そして、Y社は、通算雇用期間内に有期雇用契約を更新するに当たり、その都度、当該職員に対し、契約期間を明記した労働条件通知書を交付するなど、外形上、更新がなされたことを明確にする手続をとっていた
加えて、契約更新前には少なくとも管理職による意向確認が実施され、1名ではあるが、実際に雇止めになった契約職員が存した。
しかも、雇用期間満了時に雇止めをする可能性が高かった契約職員は、その前に辞職願を提出して退職しており、更新前の時点で当該契約職員の適性等が判断されて、雇用が継続されていないという事情もあった。
そうすると、通算雇用期間の上限内の更新手続についても、形式的かつ形骸化しており、1会計年度といった期間が存しないのと同様な状態にあったとはいえないというべきである。
かえって、Y社は、3年間の雇用期間の上限を墨守し、契約ミスの例と保健師という資格上の例外を認めざるを得なかった事案を除いて、必ず、3年で契約職員を一旦は雇止めにし、その後は、公募、ハローワークを通じた申込み、選考手続を行って再雇用をしてきたものであり、3年間の上限に達した契約職員に関しては単なる契約の更新とは明らかに異なる手続を踏んできていることが指摘できる。
以上説示してきたところによれば、本件雇止めが期間の定めのない労働契約を締結している労働者に対する解雇と同視できるとは認められない。
したがって、本件雇止めは労働契約法19条1号に該当しない

2 Y社は、その就業規則において、契約職員の通算雇用期間の上限を3年と明確に定めていたこと、かかる上限に達しない契約職員について有期雇用契約を更新する場合も、管理職による意向確認や契約期間を明記した労働条件通知書の交付といった手続をとっていたこと、原則として3年の期限を超えてそのまま更新した事例はなく、必ず更新とは明らかに性質の異なる公募が行われていたこと、A部長もXにその旨を告げていて、Xも理解していたこと、Xの契約の更新回数は2回にすぎず、通算雇用期間も3年にとどまっていたこと、Xの給与計算を主とする業務は、性質上、一定の恒常的なものであり、一定の専門性が必要であって、職員のプライバシーに携わるものであるとはいえるが、政策的・裁量的な判断がなされるべきものではなく、ルールに従って一定の処理を行うもので、担当者によって結果が異なりうるものではなく、また、業務自体は恒常的に存するものとはいえ、同一の担当者が継続的に従事する必要性の高い業務とはいえず、代替性が高いものと評価でき、業務内容から直ちに継続雇用の高い期待が生じるとまではいえないこと、しかも、Xが準職員採用試験を受験し、一旦は準職員として内部登用される機会が確保されていたことも踏まえれば、労働契約法19条2号の合理的な理由のある期待があったと認めることは困難である。

3 また、平成26年4月1日及び平成27年4月1日付け労働条件通知書における「契約期間 更新の有無」の欄の「1 契約更新の有無」の項には「ロ 更新する場合がありえる」に○印が付されているところ、Xは、かかる記載を根拠の一つとして、Xの雇用継続に対する期待には合理的な理由があると主張している。
しかし、上記各通知書の「1 契約更新の有無」の項には「イ 自動的に更新」という項目も設けられているのに、あくまで「ロ 更新する場合がありえる」に○印が付けられていたにすぎないことからすると、むしろ、Xは、契約職員就業規則に定められた通算雇用期間の上限に関する定めに従い、雇止めがなされる可能性があることを予見し得たと評価することも十分に可能である。
したがって、上記労働条件通知書の記載をもって、直ちにXの雇用継続に対する期待に合理的な理由があるとはいえない。

ここまで厳格にやっていれば雇止めも有効になります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。