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今日は、賞与の支給額の差異について労働契約法20条違反が否定された裁判例を見てみましょう。
医療法人A会事件(新潟地裁平成30年3月15日・労経速2347号36頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に非正規(有期雇用契約)職員として雇用されていたXが、雇用期間中、正規(無期雇用契約)職員には冬期賞与として基本給2か月分の賞与が支給されるのと異なり、非正規職員には冬期賞与として基本給1か月分の賞与しか支給されないという相違があることが、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めた労働契約法20条に違反すると主張して、同条に基づき、冬期賞与として支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額である基本給1か月分の給与相当額17万5000円+遅延損害金の支払を求める事案である。
原審がXの請求を認容したところ、Y社が控訴した。
【裁判所の判断】
原判決を取り消す。
→請求棄却
【判例のポイント】
1 賞与には、一般に労働の対価としての意味だけでなく、功労報償的意味及び将来の労働への意欲向上策としての意味があるとされ、勤怠査定に基づいて算定されるY社における正規職員の賞与についても同様の意味合いが認められる。期間の定めがなく長期雇用を前提とし、将来にわたる勤務の継続が期待される正規職員に対し、労働に対するモチベーションや業績に対する貢献度の向上を期待してインセンティブ要素を付与することには、一定の人事施策上の合理性が認められるから、期間の定めがあり、将来にわたる勤務の継続が期待される雇用形態となっていない非正規職員との間で相違を設けること自体が不合理であるということはできない。そして、Y社においては、正規職員には、賞与を基本配分と成績配分に区分し、成績配分の額により支給総額が増減する仕組みとする一方、非正規職員には、個別労働契約によって支給額を定額化し、成績配分の額により支給総額が増減することのない仕組みとしているところ、かかる取扱いが不合理ということはできない。
また、その相違の程度についてみると、Y社において平成27年度に事務職員に対して支給された冬期賞与の額は、正規職員は平均で基本給2.1か月分、非正規職員は一律で基本給1か月分であり、その差額は基本給約1か月分にすぎず、実際に非正規職員であったXに支給された冬期賞与とY社が正規職員の常勤Iであった場合に支給される冬期賞与の差額は、17万5000円程度であり、Xによれば、Xを常勤Iで採用したと想定した場合に得られる年間収入見込額とXが現実に得た収入額の差はほぼ賞与の差によるものであるところ、その割合は約8.25パーセントというのであるから、賞与の前記目的に沿った相違として合理的に認められる限度を著しく超過しているとはいえない。したがって、Y社が、賞与について、正規職員と非正規職員との間で前記相違を設定したことが不合理であるとは認められず、労働契約法20条に違反するとはいうことはできない。
上記判例のポイント1の理由はさておき、賞与については労働契約法20条違反になりにくいことはこれまでの裁判例の流れですね。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。