おはようございます。
今日は、2人勤務体制における仮眠時間の労働時間性が肯定された裁判例を見てみましょう。
富士保安警備事件(東京地裁平成30年1月30日・労経速2345号27頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員であるXらが、Y社はXらの労働時間を過小計上し、東京都の最低賃金を下回る賃金しか支給されず、割増賃金もほとんどが支給されていなかったなどと主張して、Y社に対し、労働契約に基づく未払賃金(割増賃金を含む。)+遅延損害金の支払いを求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
Y社は、X1に対し、338万7088円+遅延損害金、付加金283万9453円+遅延損害金を支払え。
Y社は、X2に対し、364万5521円+遅延損害金、付加金250万9350円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Y社が証人申請したY社従業員も、巡回終了後に休憩を取得することは特別になく、仮眠時間以外の拘束時間については対応を求められる状況にあったことを証言しているうえ、Xらは、巡回時以外には、警備ボックス又は守衛室での常駐を義務付けられており、仮眠時間以外に定められた休憩の時間帯はなく、仮眠時間帯であっても、守衛室から離れることは許されていなかった。そして、実際にも、本件センターは、150名弱の留学生が学生寮において生活を送っていたため、トラブル等が発生することも多く、近隣住民(とりわけ、パイロットマンションの住人)から直接苦情の電話が入ったり、近隣住民からの通報を受けた警察が来訪するなど、仮眠時間帯であっても、対応(実作業)を要する事態が発生することも少なくなかったものである。
2 警備員が2名体制となる午後5時から午前8時までの15時間のうち、午後5時から午後6時まで及び午前6時から午前8時までの3時間を除く12時間については、いずれかの警備員が仮眠に入っていたものであるから、警備員1名による勤務と基本的に相違がないと考えられる。そして、仮眠時間帯であっても2名での対応を要したり、仮眠を取る警備員が交代する際の引継ぎに時間を要する場合もあると考えられる。
仮眠時間の労働時間性が問題となる場合、形式面のみならず、実質面についても考慮されます。
上記判例のポイント1の「実際にも」以下がそれです。
ここで、確かに守衛室からルール上は離れることができなかったけれど、実際に何かが起こるのは年に1,2回だけとなると判断が変わり得ます。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。