おはようございます。
今日は、定年退職後再雇用してきた組合員2名を雇止めにしたことが不当労働行為とされた事例を見てみましょう。
島崎エンジニアリング(再雇用者雇止め)事件(東京都労委平成29年12月19日・労判1178号92頁)
【事案の概要】
本件は、定年退職後再雇用してきた組合員2名を雇止めにしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 Y社は、Aらを本件雇止めとしたのは、Y社の雇用政策に基づき進めた人員の新陳代謝の一環であり、雇用主が高齢者の雇用に関して有する裁量権の範囲で後継者の確保状況やコスト面などを考慮しての措置であると主張する。
しかし、Y社は、Aら及び組合に対し、退職金が一部支払われていないことの補償として70歳まで雇用する旨述べていたところ、70歳までの雇用が困難となったこと等を予告したり説明したりすることなく、同人らに本件雇止めを通知しており、Y社において他の65歳以上の従業員の雇用等は継続していることからすると、本件雇止めの経緯は不自然である。
2 Aらは、Y社から後進指導を指示されていたものの、指導状況の報告を求められることもなかったことからみても、Y社がAらの後継者の確保に危惧を抱いていたとはみられない。そして、Y社は、以前に後継者が確保されたため雇止めをした例があると主張するが、それを裏付けるに足りる具体的な疎明はなく、Aらの本件雇止め後2年以上が経過した本件結審時においても、Aら以外に同様の理由で雇止めとなった者がいないことからすると、Aらのみが、後継者の確保を理由に本件雇止めとされたことは、極めて異例であるということができる。
3 そうすると、Y社は、・・・組合を嫌悪し、組合員をY社から排除するため、Aらを本件雇止めとしたものというほかない。
したがって、Aらを本件雇止めとしたことは、同人らが組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たる。
上記命令のポイント1も2も合理的な説明がなされているとはいえないため、結果として不当労働行為と判断されています。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。