Daily Archives: 2018年7月13日

同一労働同一賃金6 正社員とパート社員の通勤手当の相違に関する同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、パート社員の通勤手当を正社員の半額とすることが労契法20条違反とされた裁判例を見てみましょう。

九水運輸商事事件(福岡地裁小倉支部平成30年2月1日・労経速2343号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において期間の定めのある労働契約に基づき荷役作業に従事するXらが、各自、Y社に対し、①その労働条件において通勤手当が期間の定めのない労働者に対するものの半額とされていることは労働契約法20条の禁止する不合理な差別に当たる等と主張して、労働契約又は不法行為による損害賠償請求権に基づき、平成25年1月から平成26年12月までの通勤手当の差額合計12万円+遅延損害金並びに平成27年1月から毎月末日限り通勤手当の差額5000円の支払を求めるとともに、当該不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料5万円+遅延損害金の支払を求め、②Xらに対する皆勤手当を廃止する内容の就業規則の変更は無効であると主張して、労働契約に基づき、平成26年11月と同年12月における未払皆勤手当合計1万円+遅延損害金並びに平成27年1月から毎月末日限り皆勤手当5000円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、28万円及びうち10万5000円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社が通勤手当を設けた理由は、Y社代表者の供述によれば、少しでも手当が多い方が求人に有利であるというものであり、それ自体、本件相違の合理性を肯定できる理由であるとは考え難い。また、パート社員と正社員のいずれの職務内容も、北九州市中央卸売市場での作業を中核とするものであるから、パート社員か正社員かを問わず、仕事場への通勤を要し、かつ、その通勤形態としても、多くの者が自家用車で通勤しているという点で、両者で相違はなく、パート社員の方が、正社員に比べて通勤時間が通勤経路が短いといった事情もうかがわれないのであって、通勤手当の金額を定めるに当たり、正社員の通勤経路などを調査した上でこれが定められたわけでもない
そうすると、本件相違に合理的な理由は見出せず、通勤手当がY社に勤務する労働者の通勤のために要した交通費等を填補するものであることなどの性質等にかんがみれば、上記で認定した職務内容の差異等を踏まえても、本件相違は不合理なものといわざるを得ない。
したがって、本件相違は労働契約法20条に違反するものというべきである。

現時点では、もはや通勤手当の差異については労契法20条違反で確定ですので、各社速やかに対応をすべきです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。