Monthly Archives: 6月 2018

解雇269 整理解雇の4要素をいずれも充たさないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、新聞店における整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

林崎新聞店事件(東京地裁平成29年5月24日・労判ジャーナル73号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのない雇用契約を締結して就労していた元従業員Xが、Y社のした解雇が無効であると主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇後本判決確定の日までの未払賃金等の支払並びに平成27年7月以降本判決確定の日まで毎年7月及び12月に各30万円の賞与等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

未払賞与等は棄却

【判例のポイント】

1 Y社においては、平成27年8月期には経常利益が赤字になっていることが認められるが、他方で、平成21年度には960万円であったY社の役員報酬が平成23年度には1320万円、平成24年度には1560万円に増額されていることが認められるところ、仮に役員報酬額が平成21年度以降も同年度の960万円から増額されなければ、Y社の経常利益の額はさほど減少傾向にはならず、平成27年8月期においても赤字になることはなかったことが明らかであるから、人員削減の必要性が高かったとはおよそ認め難いというべきであり、また、Y社は、本件解雇の際、移籍をXに提案したと主張するが、当該提案の事実をもってY社が解雇回避のための経営上の努力を尽くしたと認めることはできず、さらに、勤続年数が最も長く、業務に習熟し、Y社専売所において営業上最も好成績を挙げていたXを、Y社が被解雇者として選定することの合理性は見当たらないものといわざるを得ず、本件解雇は即日告知されており、Xに対する十分な説明等が尽くされたともいえないから、本件解雇は、整理解雇の4要素をいずれも充たさないものであるから、有効と認めることはできない。

2 使用者は、労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間収入の額を賃金額から控除することができるが(民法536条2項後段)、労基法26条の趣旨を勘案し、上記賃金額のうち、労基法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当であるところ、Xは、本件解雇後Y社以外の雇用主から、平成27年に33万6751円、平成28年には70万9252円の給与支払を受けていること、平成29年1月以降は収入を得ていないことが認められるから、本件解雇中のXの平均賃金(30日分)の額は26万9188円(その4割は10万7675円)と認められる。

ただでさえ判断要素が厳しい整理解雇において、上記判例のポイント1のような事情に基づき整理解雇を有効に行うのは到底不可能です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。