解雇270 解雇後の転職と復職の意思の有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、クラブ従業員の解雇事件に関する裁判例を見てみましょう。

SEEDS事件(東京地裁平成29年5月25日・労判ジャーナル73号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社から平成28年10月31日に即日解雇されたが、当該解雇は権利を濫用したものであるから無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成28年11月から本判決確定の日まで毎月16日限り月額90万円の賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認は棄却

未払賃金支払等請求は一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、弁護士に依頼して本件労働審判事件を申し立てるとともに、Y社に対し復職を求める通知をしており、自らの意思で退職したにもかかわらず、費用をかけてわざわざ弁護士に依頼して解雇されたと訴えるとも考えにくいこと等から、Xは、Y社から平成28年10月31日に即日解雇されたとみるのが相当であるところ、ここで解雇の理由についてみるに、Y社が主張するXが2名の女性スタッフを引き抜いて他店へ移籍しようとした事実について、Xはこれを否定するところ、Y社はその情報源を明らかにしておらず、また、Xの入社の条件(女性スタッフの数及び売上額)が満たされていないことについて、改善及び代替案の提示を求め続けてきたということについても具体的に立証していないこと等から、本件解雇は、解雇理由が存在しないものであって、権利を濫用したものとして無効となる(労働契約法16条)。

2 地位確認及び解雇後の賃金を請求する前提としては、労働者が解雇された会社において就労する意思および能力を有していることが前提となるところ(民法536条2項)、Xは、本件解雇の後、生活のためにA社に再就職したことについても、A社から支給された給与がY社の給与を下回っていることからみても、それにより直ちに就労の意思を喪失したとは解されないが、Y社は、Xの復職を求める内容証明郵便も受け取らず、本件労働審判の期日にも出頭せず、本件訴訟の第1回口頭弁論期日の呼出状は受け取ったものの、続行期日の呼出状も受け取らず、本件裁判の口頭弁論期日に出頭しないのであって、Y社がこのような対応をする中で、Y社から即日解雇をされたXが、A社から、Y社からの給与額を下回るとはいえ安定的な給与を得ている中で、あえてY社に復職する意思を持ち続けているとは解されないから、Xは、本件の口頭弁論終結時である平成29年4月27日の時点には、Y社に就労する意思を喪失したものとみるのが相当であり、Xの地位確認請求は理由がない。

上記判例のポイント2は参考になりますね。

復職の意思の可否については、労働者側としては気をつけておかなければなりません。

解雇無効と判断されつつ、バックペイがほとんど認められないということになりかねませんので。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。