おはようございます。
今日は、車両配送従業員の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
関西スチールテクノ事件(大阪地裁平成29年11月16日・労判ジャーナル73号24頁)
【事案の概要】
本件は、Y社が、元従業員Xに対し、Y社・X間では、有期雇用契約が締結されていたところ、雇用期間の満了によって雇用契約が終了したにもかかわらず、XはY社との雇用契約が存在していると主張しているとして、雇用関係が存在しないことの確認、XはY社で稼働中に自動車事故を起こしY社に損害を与えたとして、不法行為に基づき損害賠償を請求した事案である。
【裁判所の判断】
雇用関係不存在確認請求認容
損害賠償請求認容
【判例のポイント】
1 Y社とXは、期間の定めのない契約を合意の上で有期雇用契約に変更したものであり、Xの同意があるから一方的な不利益変更とはいえず、労働契約法9条により、雇用契約は有期雇用契約に変更されたものと認められ、そして、本件雇用契約は、無期雇用契約と同視できるものとはいえないが、元々は無期雇用契約であり、その期間は3年以上に及んでいたことや、契約締結時には更新もあり得るものとされていたことに照らせば、契約の更新の期待を抱くことには一応の合理的な理由があると解するのが相当であるところ、Y社・X間の雇用契約は配送業務に限定したものであったが、Y社はその配送業務を廃止することとなったこと、Xは1年ほどの間に本件事故を含む3回の事故を起こし、いずれの事故もXの責めに帰すべき事故であること、Xはすでに66歳であり、事故を繰り返していることからしても注意力の減退等は否定し難いこと等の本件の事情に照らせば、本件において、雇用契約を更新しないことには、客観的にみて合理的な理由があり、社会通念上不当であるとはいえない。
2 Xが従事していた業務は、車両による配送であって特段高度な技術が求められる業務ではなく、また、Xの本来的職務の一部をなすものであり、そして、Xは、形状や大きさが異なる荷物をトラックで配送する業務を担当しているから、トンネルに侵入する際は、積荷が天井に接触しないか、常に注意を払うべき立場にあるところ、本件事故はそれを怠ったことにより惹起されたものであり、Xの過失が重大であることは明らかであり、また、Xは、その前に少なくとも2度の接触事故を起こしているのであるから、車両の運転においては特に注意を払うべき立場にあったといえ、本件事故によるY社の損失は少なくとも150万円近い額であるところ、Y社は本件において、その約2割にあたる30万円しか請求していないこと、労働者に求償する額として30万円という金額が著しく高額とまではいえないことを総合すれば、本件の請求が権利の濫用にあたるとか信義則上許されないとまでいうことはできないから、30万円の損害賠償を求めているY社の請求は理由がある。
会社側が非常に理性的な対応をされているので、裁判所もこのような判断をしてくれています。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。