有期労働契約77 経営方針転換に伴う雇止めと雇止め回避努力(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、経営方針転換に伴う雇止めが無効と判断された裁判例を見てみましょう。

NTTマーケティングアクト事件(岐阜地裁平成29年12月25日・労経速2338号35頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社との間で、いずれも雇用期間を3か月とする有期雇用契約を反復更新し、営業等に従事してきたところ、Y社が、平成27年10月1日以降のXらとの間の各雇用契約を更新しなかったことが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことから、上記各雇用契約は、労働契約法19条1号又は2号によって継続していると主張して、Y社に対し、上記各雇用契約に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記各雇用契約に基づき、賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Xらのうち、雇用通算期間が最も長いX1については、12年で51回にわたり雇用契約が更新されているし、雇用通算期間が最も短いX3ですら、4年11か月で22回にわたり雇用契約が更新されていることに照らせば、XらとY社との間の雇用契約に係る雇用期間はいずれも長期間にわたり、雇用契約の更新回数も多いと評価することができる。
しかし、Y社は、Xらを含む契約社員Dとの雇用契約の更新の都度、契約社員Dに対し、更新後の雇用契約に係る雇用条件が記載された雇用契約書を交付し、同契約書に署名・押印の上、提出してもらうという手続をとることによって、雇用契約の更新に係る契約社員Dの意向を更新の都度、確認してきたことが認められる。また、新たな雇用契約の始期の後に雇用契約書が渡されることがあったものの、これが常態化していたと認めることはできない。
これらによると、Y社は、Xらとの雇用契約の更新に当たり、その都度、雇用契約書を提出させることによって、雇用契約の更新に係るXらの意向等について確認していたものであり、XらとY社との間の雇用契約の更新手続が一概に形骸化していたとまでいうことはできない
以上によれば、XらとY社との間の各雇用契約は、期間の定めのない労働契約と社会通念上同視できるとまで認めることは困難であるから、労契法19条1号所定の有期労働契約には該当しないというべきである。

2 XらとY社との間の雇用契約に係る雇用期間はいずれも長期間にわたり、雇用契約の更新回数も多いと評価することができること、Xらが、アクト岐阜、NTT西日本ー岐阜又はNTT西日本ー東海に採用された後、一貫して一般消費者に対するフレッツ光の直接販売業務等に従事していたところ、Xらの業務内容や従事していた期間に照らしても、Xらが従事していた業務は、Y社において恒常的に存在していた基幹的な業務であると認められること、雇用契約の更新について、X1は、打切りの可能性も含めて何らの説明も受けなかったし、その余のXらについても、最初の雇用契約の締結に際し、健康で、極端に営業成績が悪くなければ雇用契約の更新が続けられる、健康で売上目標を達成していれば最長65歳まで雇用を継続する、年齢は関係なく、健康で成績がよければいつまでもいられるなど雇用の継続を期待させるような説明を受けるなどしていたこと、Xらに係る雇用期間の始期を平成20年4月1日とする雇用契約書以降の各雇用契約書には、「雇用更新の可能性」について「有」と明記されるようになったこと等の事情を総合的に勘案すると、Xらにおいて、Y社との間の各雇用契約満了時に当該雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認めるのが相当である。

3 本件雇止めについて、人選の合理性や手続の相当性を欠くとはいえず、また、Y社において、契約社員C・Dに係る人員削減の必要性が一定程度生じたことは否定できないとはいえ、雇止めの対象者の人数等に見合うほどの人員削減の必要があったか否かについては疑義があること、Y社の対応は、Xらを含む雇用契約社員Dの雇用確保又は雇用喪失に対する手当てとして不相当であり、Y社が本件同意書の提出を前提条件として、本件斡旋措置や本件支給措置を講じたとしても、本件雇止め回避努力としては、不十分なものであることを総合的に考慮すれば、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものであると認めることはできない

2号事案ですが、雇止め回避努力が不十分ということで無効と判断されています。

現在は5年ルールがあるので、12年にもわたる長期間の更新は少なくなっていくと思いますが、これだけ長いとそう簡単に雇止めができないことは明らかです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。