Monthly Archives: 5月 2018

本の紹介794 幸せになる勇気(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

「嫌われる勇気」に続く二部作です。

会話形式で話が進められていきます。

向き不向きが分かれる本ですかね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

アドラーは言います。われわれはみな、『わたしは誰かの役に立っている』と思えたときにだけ、自らの価値を実感することができるのだと。自らの価値を実感し、『ここにいてもいいんだ』という所属感を得ることができるのだと。」(237頁)

自分がここにいる意味、自分がこの仕事をしている価値を感じられるかどうか。

生きているという実感を持てるかどうか。

そんなことを考える間もなく、時間だけが過ぎていくのが実際のところですかね。

死を意識したとき、自分は何を残せるのかということを真剣に考えることがあります。

今の仕事のしかたでいいのか、

もっとできることはないのか。

まあ、多忙な毎日の中で、ときどきゆっくりそんなことを考えるのもいいのかもしれませんね。

セクハラ・パワハラ39 パワハラによるうつ病発症と慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パワハラに基づく元上司と会社に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

東建コーポレーション事件(名古屋地裁平成29年12月5日・労判ジャーナル72号25頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社において元上司Aからパワーハラスメント行為を受け、うつ病となり、退職を余儀なくされたなどと主張して、Aに対し不法行為に基づく損害賠償として、Y社に対し使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行責任に基づく損害賠償として、約752万円等の連帯支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Aの言動は、Xに対する嫌がらせ、いじめ、あるいは過大な要求と捉えざるを得ないものであって、強度の心理的負担をXに与えていたといえ、そして、Xは、平成26年3月頃から、手先のしびれと震え、倦怠感、記憶の不安定がみられるようになって内科を受診し、さらには同年5月以降、精神科を受診して同年4月頃にうつ病を発症したと診断され、休職に至ったものであり、上記の経緯と照らし合わせても、Xは、Aの言動によって同月頃にはうつ病を発症し、休職に至ったものといえ、本件パワハラ行為のころ、Xは家庭内で妻と別々に過ごす時間が多くなっていた事実が認められるが、これが深刻なものであったことをうかがわせる事情は見当たらず、これがXのうつ病発症の原因となったとは認められないから、Aの本件パワハラ行為一覧表記載の一連の言動は、Xに対するパワハラ行為といえ、不法行為を構成するものというべきである。

2 XがY社に入社した時点において、Aには既に他の従業員に対する威圧的な言動が時にみられたところであるが、そのようなAに対する指導等が本件パワハラ行為以前にされた形跡はうかがわれないこと、AのXに対する本件パワハラ行為について、他の従業員が相談窓口に連絡した形跡もうかがわれず、抜き打ち調査等でも把握されなかったことなどに照らすと、Y社の前記措置は、実際には必ずしも奏功しているものではなく、実際にAの本件パワハラ行為が数箇月にわたって継続していたことからしても、Y社は、Aの選任、監督につき相当の注意をしたとはいえないものというべきであるから、Y社は、Xに対し、Aのした本件パワハラ行為について使用者責任を負い、Aと連帯して損害賠償義務を負う。

3 ・・・本件パワハラ行為により、Xは就労困難なうつ病に罹患したものであって、その程度は決して軽いものではなく、Y社はXが休むようになった平成26年6月以降、本件パワハラ行為等について調査を行うなど一定の対応をしているとはいえるものの、労災認定がされるまではこれをパワハラとは判断しなかったものであって、結果的にその対応は十分なものであったとはいえず、また、Aについても、現在に至るまでXに対し特段の対応をしていないこと等から、本件パワハラ行為によりXに生じた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の金額は、100万円を下らない。

ハラスメント事案における会社の対応方法については、各社でしっかり手順を理解しておくことは必須です。

事前の予防と事後の対応をしっかり準備しておきましょう。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介793 息を吸って吐くように目標達成できる本(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
息を吸って吐くように目標達成できる本

著者が考える「力まず自然体で目標を達成する方法」が紹介されています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いつだって、解決すべき問題は山積みです。だって、人生そのものが問題集みたいなものですから。達成しても、また問題がやって来ます。挑戦すれば、また新たな問題を抱えます。ゲームにしても、ステージをクリアすればするほど、どんどん新しい敵が出てきて、新たな問題解決のために奮闘して、どんどん上のステージに上っていくのです。だから、現実に、問題に直面しても、
『ああ、問題くん、こんにちは。また階段を上るチャンスをありがとう。問題は解決するためにあるから必ず解いてみるね』と大きく構えて、笑顔で向かってみてください。」(38~39頁)

問題を次のステージに上がるためのチャンスと捉える考え方です。

すべては解釈の問題なので、強がりでもなんでもいいので、そう考えることが大切です。

これを続けていると、自然と無理せずにこのような考え方をすることができるようになります。

問題それ自体には意味はなく、あるのはその人の解釈だけだという考え方は人生を大きく変えるインパクトがあります。

解雇265 第三者に告発文を送った労働者に対する解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、第三者に告発文を送った営業社員に対する解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

A不動産事件(広島高裁平成29年7月14日・労判1170号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結してY社の従業員であったXが、Y社において、平成26年10月9日に、Xに対し、同年9月30日付けでするとした解雇の意思表示は、懲戒解雇及び普通解雇のいずれにも該当する事由がなく、仮にいずれかに該当する事由があったとしても、当該解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるといえないから無効であると主張して、Y社との間の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成26年10月から判決確定の日まで各月5日限り、賃金として各月24万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、Y社のXに対する懲戒解雇の意思表示は有効であると判断し、Xの請求を全部棄却した。

【裁判所の判断】

原判決を次のとおり変更する。

Y社は、Xに対し、380万1290円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 懲戒解雇事由(12)は、「会社の信用を著しく損なう行為のあったとき。」というものであり、その「著しく」という文言があることのほか、一般に、懲戒解雇が労働者に与える影響、効果にも鑑みると、本件懲戒解雇事由(12)に該当する信用毀損行為は、単に、信用を損なう行為があったというだけでなく、その行為により、会社の信用が害され、実際に重大な損害が生じたか、少なくとも重大な損害が生じる蓋然性が高度であった場合をいうものと解するのが相当である。
この点につき、確かに、Y社は、同族経営の小規模な会社であり、役員個人の信用に係る事実がY社の信用に直結するといえる。また、Y社は、顧客からの信用を得て高額の不動産取引に関与する業態であるから、信用の維持はY社Y社にとって重要であり、Y社代表者が本件強化の理事及び本部長に就任したことも、Y社がそれまで培った信用を基礎としていることがうかがわれるところ、本件送信により、本件協会の会員に対し、Y社の役員が本件刑事事件により逮捕された事実が広く知られるとの結果が生じたのであり、Y社の信用毀損の程度を軽く見ることはできない。
しかし、他方で、本件送信はY社の顧客に対してされたものではなく、Y社に売上の低下等の経済的な実損害が生じたものではない。また、Y社代表者が本件協会の理事及び本部長の辞任を余儀なくなされるには至っていない。そうすると、本件送信による信用毀損が原因で、Y社に実際に重大な損害が生じたとか、重大な損害が発生する蓋然性が高かったとまでは認められず、このほか、これを認めるに足りる証拠はない。
よって、本件送信の事実をもって、Xに本件懲戒解雇事由(12)に該当する事由があったということはできない。

2 本件通知書には、就業規則上の懲戒解雇事由の具体的な条項が記載されていないが、解雇理由及びこれに続く部分には、本件懲戒解雇事由(11)及び(12)に該当する趣旨と解される記載がされており、本件通知書の内容を説明したY社代理人作成の回答書には懲戒解雇であることが明記されているから、本件通知書により懲戒解雇の意思表示がされたものであると認められる。
そして、本件通知書には、本件告訴をしたことが併記されているとおり、Xによる秩序違反に対して制裁を行使する意思であることが容易に認められる一方で、普通解雇事由の具体的な条項その他本件労働契約の解約申入れにすぎないことを窺わせる記載はされておらず、普通解雇の意思表示が内包されているとは認められない
よって、本件通知書により普通解雇の意思表示がされたと認めることはできない。上記によれば、本件普通解雇事由が存在し、客観的に相当であるから、上記意思表示は有効であり、上記陳述がされた平成27年11月26日から30日が経過した同年12月26日をもって、本件労働契約が終了したと認めることができる

原審、控訴審の判決理由を読んでみましたが、私は一審の判断のほうが腑に落ちます。

また、懲戒解雇と普通解雇の関係について判例のポイント2が参考になります。

訴訟でもよく議論になるところなので押さえておきましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介792 魚を与えるのではなく、魚を与えるのではなく、サカナの釣り方を教えよう(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
魚を与えるのではなく、サカナの釣り方を教えよう 起業家の父から愛する子へ33の教え

親は子どもに「財産」を与えるのではなく、「財産の作り方」を教えるのだと。

財産を与えれば、それを食いつぶして減らすだけ。

財産の作り方を教えれば、財産は減ることはなく増えます。

生活する力をつけるためにはどうしたらいいかが書かれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

失敗者と成功者の間にたったひとつの違いがあるとすれば、それは『習慣』の違いだ。習慣というのは、それほど苦もなく、それが行えるようになることをいうんだけど、これをずっとやり続けるのが案外難しい。週3回ジムに通う、毎日1時間勉強をする、毎日英単語を10個覚える、ブログを毎日書く、毎週1冊本を読む、時間を守る・・・、簡単そうだけど、なかなか続けられる人はいない。でもね、こういう誰もができることを徹底的に習慣化できる人が、成功するものなんだよ。」(169頁)

特に付け加えることはありません。

まったくその通りです。

世の中の成功は習慣によってできていますので。

三日坊主から何かが生まれることはありません。

続けるか、途中で投げ出すか。

ただそれだけの話です。

賃金152 賃金規程の不交付と慰謝料請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、非組合員に対する労働協約の適用の有無と退職金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

代々木自動車事件(東京地裁平成29年2月21日・労判1170号77頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員であったXが、Y社に対し、①定年退職に伴う退職金+遅延損害金並びに②申請した有給休暇に係る未払賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、③Y社において、根拠なく控除を行うなどしてXの賃金を不当に低く抑えていたことや、有給休暇の申請を正当な理由なく拒否するなど不誠実な対応をしていたことなどが不法行為を構成すると主張して、慰謝料+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、60万4000円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、11万5528円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、50万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、本件組合の組合員ではなく、本件組合の組織率が4分の3以上(労働組合法17条参照)であるとは認められないから、平成8年協定書及び平成14年協定書が、労働協約としてXを拘束することはない。

2 勤続年数計算方法については、退職金支給規定8条において、入社の日より起算して、退職又は死亡の日までと定められている。そうすると、63歳時点までの勤続年数をもって、退職金算定のための勤続年数として取り扱うことを定める平成8年協定書の内容が、そのような限定を加えていない退職金支給規定に抵触することは明らかである。
そして、退職金支給規定は、就業規則46条に基づく規定であるから、労働契約法12条により、これに抵触する労使慣行の効力を認める余地はない。

3 時季変更権の行使には、その前提として、他の時季に有給休暇を取得する可能性の存在が前提となるところ、Xは、定年退職時に未消化有給休暇全ての取得を申請しているのであるから、他の時季に有給休暇を取得する可能性が存在せず、Y社において時季変更権を行使することは認められない

4 Y社は、乗務員賃金規定について、Xを含む乗務員に対する周知を欠いていたところ、平成23年10月ころから平成24年3月ころまでの間、Xから、何度も賃金に関する規定の交付を求められていたにもかかわらず、Xが退職するまで、これをあえて交付しなかったものである。そして、Xは、在職中に、乗務員賃金規定を確認し、Y社における賃金制度の内容を正確に把握したうえで、その問題点(累進歩合制度、各種控除、組合員と非組合員との賃金格差等)について検討し、Y社に対し、未払賃金を請求できないかを検討したり、不合理な労働条件の是正に向けてY社と交渉等を行う機会を奪われたものであるから、賃金に関する規定の交付要求に応じなかったY社の不誠実な対応は著しく社会的相当性を欠くものとして、不法行為を構成するというべきであり、Y社は、Xに対し、Xの受けた精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべき義務を負う。

上記判例のポイント4で50万円もの慰謝料が認められています。

相場観がよくわかりませんが、会社としては気をつけなければいけません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介791 「勝ち抜く大人」の勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
「勝ち抜く大人」の勉強法 (新書y)

15年以上前の本ですが、もう1度読み返してみました。

勉強法とはいえ、具体的な方法論というよりは勉強に対する姿勢が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人はけっして誤った選択から自由になることができません。大事なことは誤った選択をしたときにはいち早くそれに気づいて、軌道修正できるか否かがかしこくなれるかどうかの決め手なのです。さもないと、間違った選択がさらなる間違った選択を呼び、今日のわが国の経済状況に典型的に見られるように、泥沼からまったく抜け出せない事態へと発展するからです。」(124~125頁)

冤罪を生み出す仕組みと同じです。

「あれ、この人、犯人じゃないかも・・・」と思った段階で方向転換ができればいいのですが、証拠をねつ造してまでも自分たちの判断が正しかったとしたい捜査当局のようです。

それはさておき、誤った選択を絶対にしないなんてことは不可能です。

人間ですから間違うこともあります。

間違えたと思ったときに軌道修正をする勇気、スピードこそが大切なのです。

「ぶれない」ことがよしとされている昨今ですが、状況に応じて臨機応変に対応することはどんどんすべきです。

ぶれていいのです。

解雇264 解雇前の指導教育とそれに対する労働者の態度(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金減額を伴う配転命令及び懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

レコフ事件(東京地裁平成29年2月23日・労判ジャーナル72号57頁)

【事案の概要】

本件は、企業買収や合併等に関するコンサルティング業を行うY社に勤務する元従業員Xが、Y社に対し、賃金減額等の処分、配転命令、解雇等の懲戒処分がいずれも無効である旨を主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、未払賃金及び賞与等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

配転命令に伴う賃金減額は無効

【判例のポイント】

1 4月1日付け賃金減額(降格に伴う賃金減額)の有効性について、平成24年度におけるXの業績及び能力は、Xが、Y社代表者の指示等を全く聞き入れないばかりか、Xにおいて客観的な状況等を正しく把握する能力や姿勢が欠如していたことからすると、Y社代表者のみならず他の幹部職員の総意の下になされた絶対的にも相対的にも著しく低いXの業績評価は妥当であり、そのような人事考課に基づきXの職掌(ランク・職号)を平成25年4月1日付けで「VP-11」から「VP-9」に降格された上、それに伴い従前67万7000円であった基本給を63万7000円に減額したY社の措置(4月1日付け賃金減額)は、Xが被る不利益の程度を勘案しても、適法かつ有効である。

2 これまでのXの業績の低さや勤務態度が著しく不良であること、そのような状況を踏まえて、本件譴責処分や本件出勤停止処分といった懲戒処分が行われたにもかかわらず、Xがその態度を改めようとする姿勢を全く示すことなく、むしろ、そのような処分等に及んだY社の側に能力的な問題があってXよりも劣るものであるという認識で凝り固まっており、上司等への誹謗中傷を何のためらいもなく繰り返していることや、就業規則や業務命令等に明らかに反する自己の行為の正当性を独善的なな考えに基づき主張し続けることからすると、就業規則所定の「正当な理由なく業務上の指揮命令に従わず、不当に反抗し、業務の正常な運営を妨害したとき」及び「数度の懲戒処分にかかわらず、改悛の情がないとき」に該当するものと認められ、これに加えて諭旨解雇ないし懲戒解雇における就業規則所定の手続に関する瑕疵が全く主張されず、Xにおいてこれを争うものではないことからすると、これら一連の処分に係る手続は適正に経られたものと推認され、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上の相当性も認められる。

解雇事案の場合、上記判例のポイント2のように、解雇前の指導教育時における労働者の態度を具体的に主張立証することが重要です。

この過程を経ずにいきなり解雇をしてしまうと会社側にとって厳しい判断が待っています。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介790 日本電産 永守重信が社員に言い続けた仕事の勝ち方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
日本電産 永守重信が社員に言い続けた仕事の勝ち方

永守社長の本はこれまでに何冊か読んできましたが、どの本を読んでも仕事に対する厳しさがびしびし伝わってきます。

甘っちょろい考え方は一切通用しないことがよくわかります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『人生というのは、長い目で見れば苦と楽が半分ずつ、そういうものだと思う。楽をすれば、必ずそのあとには苦がついてくるものだし、苦しみのあとでこそ、本当の楽を得られるものだ』『ところが、多くの人々は楽を求めすぎるように思えてならない。いい車に乗りたい、いい家に住みたいと、自己の欲望だけを大きく膨らませている。それに至る苦を経験せずして-』』」(30頁)

No pain, No gainですね。

人の2倍働き、3倍努力する。

人が休んでいるときにこそ汗をかく。

それを途中で投げ出さずにやり続ける。

それができれば、いやでも結果は出ます。

頭ではわかっていても体が言うことをきかないのです。

途中で投げ出すくせがついているとそこから抜け出すのは至難の業です。

でも、人生を変えるためには、日頃の習慣を変える以外に方法はありません。

できるかできないかではなく、やるかやらないかの問題です。

配転・出向・転籍35 上司の不適切発言と慰謝料請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 みなさん、よいGWを!

今日は、転勤命令の有効性ならびに上司らの言動等による不法行為の成否に関する裁判例を見てみましょう。

ホンダ開発事件(東京高裁平成29年4月26日・労判1170号53頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に正社員として採用され、そのA5事業部総務係に配属されたXが、その後、上司であるC及びDらの言動により精神的に苦痛を与えられた上、合理的な理由なく、不当な動機・目的によりY社のA3事業部ケータリングサービス課ランドリー班に異動させられたとして、Y社に対し、A3ランドリー班において勤務する労働契約上の義務を負わないことの確認を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求権により、慰謝料500万円+遅延損害金の支払いを求める事案である。

原審は、請求棄却。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、100万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社の労働協約及び就業規則には、業務上の都合により、配置転換等を命ずることがある旨が規定されており、Y社には社員の配置転換等について、裁量が認められるところ、Xも出張精算業務や常便業務等の一定の総務業務は担当していたが、担当する業務においてミスが多く見受けられていたこと、A5総務では総務係の人数等から総務業務以外の業務も内部で手分けして担当する必要があった反面、A3ランドリー班では洗濯物の数量が増加し、人員の補強が求められており、本件異動命令が不当な動機・目的をもってなされたとまでは認めるに足りる証拠がないことからすれば、C及びDがしたXへの業務分担の在り方や本件異動を命ずることなどは、新卒社員に対する対応としては配慮に欠ける部分が多く見られるものの、これを違法と評価し、本件異動命令が無効であるとまで認めることはできない

2 しかしながら、Xが、大学院卒の新入社員でありながら、配属直後に、X以外誰も経験していない配属先の部署とは異なる部署で約1か月半もの間の研修を命じられたこと、その後も2年以上にわたって、配属先の部署の業務に専念し、同業務を修得する十分な機会を与えられないままの状態にありながら、本来達するべきレベルに達していないとの評価をされた上、それまでの業務とは関係がなく、周囲から問題がある人と見られるような部署に異動させられたことが認められる。また、Xは、総務係の仕事を担当することを希望しながら、実際には、C又はDの指示により、販売部門の所管する自販機の在庫集計作業やOJTプログラムには記載がない社員寮の契約社員の面接事務を担当した上、自販機の在庫集計作業では、自らの提案が認められなかったのに、Jの同様の提案は採用され、Cから、Jを見習うように指導されたことが認められる。そして、Cの平成23年12月の面談の際の発言は、X本人尋問の結果からうかがわれるXの内向的な性格に加え、同期会が関東地区で行われたことに鑑みると、Y社における上司で、先輩社員であることからの助言であるとしても、配慮を欠いたものというべきである。また、Cの平成24年8月の面談の際の発言についても、ミスは重ねながらも、ケアレスミスをなくし、少しずつではあるができる役割を増やそうとしているXに対し、配慮を欠いた言動であり、これを聞いたXが悔しい気持ちを抱いたことは十分に理解できる。さらに、平成25年7月の新入社員の実習終了後の送別会の二次会でのDの「多くの人がお前をばかにしている。」との発言に至っては、Xに対する配慮が感じられない発言であり、内向的な性格のXが「多くの人って誰ですか」と問いただしたことからも、Xの屈辱感には深いものがあったというべきである
以上のC及びDの言動並びに本件異動は、一体として考えれば、Xに対し、労働者として通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を課すものと評価すべきであり、かつ、前記のC及びDの言動はY社の業務の執行として行われたものであることから、全体としてY社の不法行為に該当する。

通常、このようなケースでは、裁判所は多額の慰謝料を認めない傾向にあります。

本件では、100万円を認めており、金額としては比較的高額になっています。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。