Daily Archives: 2018年5月16日

セクハラ・パワハラ39 パワハラによるうつ病発症と慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パワハラに基づく元上司と会社に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

東建コーポレーション事件(名古屋地裁平成29年12月5日・労判ジャーナル72号25頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社において元上司Aからパワーハラスメント行為を受け、うつ病となり、退職を余儀なくされたなどと主張して、Aに対し不法行為に基づく損害賠償として、Y社に対し使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行責任に基づく損害賠償として、約752万円等の連帯支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Aの言動は、Xに対する嫌がらせ、いじめ、あるいは過大な要求と捉えざるを得ないものであって、強度の心理的負担をXに与えていたといえ、そして、Xは、平成26年3月頃から、手先のしびれと震え、倦怠感、記憶の不安定がみられるようになって内科を受診し、さらには同年5月以降、精神科を受診して同年4月頃にうつ病を発症したと診断され、休職に至ったものであり、上記の経緯と照らし合わせても、Xは、Aの言動によって同月頃にはうつ病を発症し、休職に至ったものといえ、本件パワハラ行為のころ、Xは家庭内で妻と別々に過ごす時間が多くなっていた事実が認められるが、これが深刻なものであったことをうかがわせる事情は見当たらず、これがXのうつ病発症の原因となったとは認められないから、Aの本件パワハラ行為一覧表記載の一連の言動は、Xに対するパワハラ行為といえ、不法行為を構成するものというべきである。

2 XがY社に入社した時点において、Aには既に他の従業員に対する威圧的な言動が時にみられたところであるが、そのようなAに対する指導等が本件パワハラ行為以前にされた形跡はうかがわれないこと、AのXに対する本件パワハラ行為について、他の従業員が相談窓口に連絡した形跡もうかがわれず、抜き打ち調査等でも把握されなかったことなどに照らすと、Y社の前記措置は、実際には必ずしも奏功しているものではなく、実際にAの本件パワハラ行為が数箇月にわたって継続していたことからしても、Y社は、Aの選任、監督につき相当の注意をしたとはいえないものというべきであるから、Y社は、Xに対し、Aのした本件パワハラ行為について使用者責任を負い、Aと連帯して損害賠償義務を負う。

3 ・・・本件パワハラ行為により、Xは就労困難なうつ病に罹患したものであって、その程度は決して軽いものではなく、Y社はXが休むようになった平成26年6月以降、本件パワハラ行為等について調査を行うなど一定の対応をしているとはいえるものの、労災認定がされるまではこれをパワハラとは判断しなかったものであって、結果的にその対応は十分なものであったとはいえず、また、Aについても、現在に至るまでXに対し特段の対応をしていないこと等から、本件パワハラ行為によりXに生じた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の金額は、100万円を下らない。

ハラスメント事案における会社の対応方法については、各社でしっかり手順を理解しておくことは必須です。

事前の予防と事後の対応をしっかり準備しておきましょう。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。