おはようございます。
今日は、非組合員に対する労働協約の適用の有無と退職金等請求に関する裁判例を見てみましょう。
代々木自動車事件(東京地裁平成29年2月21日・労判1170号77頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員であったXが、Y社に対し、①定年退職に伴う退職金+遅延損害金並びに②申請した有給休暇に係る未払賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、③Y社において、根拠なく控除を行うなどしてXの賃金を不当に低く抑えていたことや、有給休暇の申請を正当な理由なく拒否するなど不誠実な対応をしていたことなどが不法行為を構成すると主張して、慰謝料+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
Y社は、Xに対し、60万4000円+遅延損害金を支払え
Y社は、Xに対し、11万5528円+遅延損害金を支払え
Y社は、Xに対し、50万円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 Xは、本件組合の組合員ではなく、本件組合の組織率が4分の3以上(労働組合法17条参照)であるとは認められないから、平成8年協定書及び平成14年協定書が、労働協約としてXを拘束することはない。
2 勤続年数計算方法については、退職金支給規定8条において、入社の日より起算して、退職又は死亡の日までと定められている。そうすると、63歳時点までの勤続年数をもって、退職金算定のための勤続年数として取り扱うことを定める平成8年協定書の内容が、そのような限定を加えていない退職金支給規定に抵触することは明らかである。
そして、退職金支給規定は、就業規則46条に基づく規定であるから、労働契約法12条により、これに抵触する労使慣行の効力を認める余地はない。
3 時季変更権の行使には、その前提として、他の時季に有給休暇を取得する可能性の存在が前提となるところ、Xは、定年退職時に未消化有給休暇全ての取得を申請しているのであるから、他の時季に有給休暇を取得する可能性が存在せず、Y社において時季変更権を行使することは認められない。
4 Y社は、乗務員賃金規定について、Xを含む乗務員に対する周知を欠いていたところ、平成23年10月ころから平成24年3月ころまでの間、Xから、何度も賃金に関する規定の交付を求められていたにもかかわらず、Xが退職するまで、これをあえて交付しなかったものである。そして、Xは、在職中に、乗務員賃金規定を確認し、Y社における賃金制度の内容を正確に把握したうえで、その問題点(累進歩合制度、各種控除、組合員と非組合員との賃金格差等)について検討し、Y社に対し、未払賃金を請求できないかを検討したり、不合理な労働条件の是正に向けてY社と交渉等を行う機会を奪われたものであるから、賃金に関する規定の交付要求に応じなかったY社の不誠実な対応は著しく社会的相当性を欠くものとして、不法行為を構成するというべきであり、Y社は、Xに対し、Xの受けた精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべき義務を負う。
上記判例のポイント4で50万円もの慰謝料が認められています。
相場観がよくわかりませんが、会社としては気をつけなければいけません。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。