おはようございます。
今日は、賃金減額を伴う配転命令及び懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
レコフ事件(東京地裁平成29年2月23日・労判ジャーナル72号57頁)
【事案の概要】
本件は、企業買収や合併等に関するコンサルティング業を行うY社に勤務する元従業員Xが、Y社に対し、賃金減額等の処分、配転命令、解雇等の懲戒処分がいずれも無効である旨を主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、未払賃金及び賞与等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
懲戒解雇は有効
配転命令に伴う賃金減額は無効
【判例のポイント】
1 4月1日付け賃金減額(降格に伴う賃金減額)の有効性について、平成24年度におけるXの業績及び能力は、Xが、Y社代表者の指示等を全く聞き入れないばかりか、Xにおいて客観的な状況等を正しく把握する能力や姿勢が欠如していたことからすると、Y社代表者のみならず他の幹部職員の総意の下になされた絶対的にも相対的にも著しく低いXの業績評価は妥当であり、そのような人事考課に基づきXの職掌(ランク・職号)を平成25年4月1日付けで「VP-11」から「VP-9」に降格された上、それに伴い従前67万7000円であった基本給を63万7000円に減額したY社の措置(4月1日付け賃金減額)は、Xが被る不利益の程度を勘案しても、適法かつ有効である。
2 これまでのXの業績の低さや勤務態度が著しく不良であること、そのような状況を踏まえて、本件譴責処分や本件出勤停止処分といった懲戒処分が行われたにもかかわらず、Xがその態度を改めようとする姿勢を全く示すことなく、むしろ、そのような処分等に及んだY社の側に能力的な問題があってXよりも劣るものであるという認識で凝り固まっており、上司等への誹謗中傷を何のためらいもなく繰り返していることや、就業規則や業務命令等に明らかに反する自己の行為の正当性を独善的なな考えに基づき主張し続けることからすると、就業規則所定の「正当な理由なく業務上の指揮命令に従わず、不当に反抗し、業務の正常な運営を妨害したとき」及び「数度の懲戒処分にかかわらず、改悛の情がないとき」に該当するものと認められ、これに加えて諭旨解雇ないし懲戒解雇における就業規則所定の手続に関する瑕疵が全く主張されず、Xにおいてこれを争うものではないことからすると、これら一連の処分に係る手続は適正に経られたものと推認され、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上の相当性も認められる。
解雇事案の場合、上記判例のポイント2のように、解雇前の指導教育時における労働者の態度を具体的に主張立証することが重要です。
この過程を経ずにいきなり解雇をしてしまうと会社側にとって厳しい判断が待っています。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。