Monthly Archives: 5月 2018

本の紹介799 3週間続ければ一生が変わるPart2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
3週間続ければ一生が変わる〈Part2〉きょうからできる最良の実践法―最高の自分に変わる101の英知

良い習慣を身につけることの大切さが説かれています。

習慣化するのが得意な人には当たり前の話ですが、そうでない人は是非読んでみてください。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

すばらしいビジネスは、細部にまで驚くほど気を配っています。わたしは、ハーヴァード大学の古生物学者・進化生物学者、スティーブン・ジェイ・グルードがかつていったことばがお気に入りです。
『なによりも大切なのは細部だ。神は細部に宿るから、それらを正しく理解しなければ、神の姿を見ることはできない』」(259~260頁)

あらゆる仕事に通じることです。

大ざっぱな仕事をいくらしても神の姿を見ることはできません。

But that’s easier said than done.

60点のテストを80点にするよりも95点のテストを100点にすることのほうが大変なのです。

最後の最後の5点をどう獲得していくか。

神の姿は最後の最後に見ることができるのです。

賃金153 退職金規定廃止に対する従業員の同意の成否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職金規定廃止に対する元従業員の同意の成否に関する裁判例を見てみましょう。

アイディーティージャパン事件(東京地裁平成29年3月28日・労判ジャーナル73号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、退職したとして、就業規則に基づき、退職金約1840万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件の退職金規定廃止は、Xの退職金約1800万円を喪失させるものであり、Xは、一時金214万2000円とA社株式のストックオプション(仮にY社主張の価値があるとしても約1040万円)の付与と引き換えに退職金規定廃止に同意する旨の書簡兼同意書に署名しているとはいえ、その直前には、Y社宛の「就業規則の退職金制度廃止に関する確認書」と題する書面に対する署名を拒否していること、上記署名の翌日には、一時金214万2000円を平成23年度の功績に対して同一時金を支払う旨記載した書簡に署名しているため、上記書簡兼同意書の内容とは明らかに矛盾する内容の書面に署名していること、B社本社又はY社からXに対して退職金規定の廃止に関して十分な説明がなされている形跡も見当たらないことに鑑みると、本件では、Xが自由な意思に基づいて同意していると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとは認めがたいから、本件では、退職金規定廃止に関してXの同意は認められず、また、その不利益変更に関する合理性もうかがわれないため、就業規則の退職金規定廃止は無効である

2 Y社は、仮に退職金規定が廃止されていないとしても、Xは書簡兼同意書に署名したことで退職金請求権を放棄している旨主張するが、書簡兼同意書はB社本社とXの間の合意書であるところ、Y社の代理人である旨の顕名がないことも、Y社が効果帰属主体であることをXが認識し又は認識しえたともいえず、また、退職金請求権放棄の意思表示が認められるためには、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要と解されるところ、この点についても認められないから、本件では退職金請求権放棄の意思表示は認められず、Y社の退職金規定の廃止は無効であり、旧就業規則の退職金規定は存続しているところ、これによると、Xの退職金は、1839万5417円である。

賃金等の減額について労働者の同意を得たとしても、上記のように同意の効果を否定されることがあります。

「自由な意思」に基づいているかどうかがポイントになりますが、これは決して主観(内心)の問題ではなく、客観的な事情から認定されることに注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介798 五つ星のお付き合い(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
五つ星のお付き合い

人生の成功や、仕事の成功は、いつも素敵なお付き合いの向こう側にあります」(7頁)

その通りですね。

誰と出会い、誰と日常の時間を過ごすかによって、人生は大きく変わります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間関係において、焦りは禁物です。たいてい『求めすぎるとその人を遠ざけてしまう』という法則があてはまるからです。特に相手が、自分より立場が上の場合は気をつけましょう。その人の気持ちを邪魔しないように、奥ゆかしさを大切にしたいものです。」(65頁)

追えば逃げるのは、人間関係も仕事もすべて同じことです。

このことがわかっている人は、日頃から「奥ゆかしさ」がにじみ出ています。しかも無意識に。

仕事をください、仕事くださいと焦っている人に安心して仕事を出す人がいるでしょうか。

まずは自分に力をつけることが最初です。

力をつけるために日々努力をする。

力がつけば、自ずと人間関係も仕事も追わずともうまく回っていくものです。

「焦りは禁物」とはまさにそのとおりなのです。

解雇268 主治医の見解を採用せず、休職期間満了による雇用契約終了を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、主治医の見解を採用せず、傷病休職の期間満了による雇用契約の終了を認めた裁判例を見てみましょう。

東京電力パワーグリッド事件(東京地裁平成29年11月30日・労経速2337号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、傷病により休職し、就業規則の定めに基づく休職期間の満了により雇用契約が終了し、退職したとされたのに対し、休職期間満了時に復職が可能であったと主張して、雇用契約に基づき、労働契約上の地位の確認及び休職期間満了後である平成26年4月から本判決確定の日までの各月の月額給与31万3500円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xについて休職の事由が消滅したというためには、①休職前の業務である架空送電設備の保守、運用、管理の業務が通常の程度に行える健康状態となっていること、又は当初軽易作業に就かせればほどなく上記業務を通常の程度に行える健康状態になっていること(健康状態の回復)、②これが十全にできないときには、Y社においてXと同職種で、同程度の経歴の者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務を提供することができ、かつ、Xがその提供を申し出ていることが必要である(他部署への配置)。

2 Xは、主治医のE医師の診断を根拠として、復職が可能である旨主張する。
しかしながら、同医師の就労可能という見解は、リワークプログラムの評価シートを参照しておらず、リワークプログラムに関与した医師の見解等を踏まえていないものである上、患者の職場適合性を検討する場合には、職場における人事的な判断を尊重する旨述べていること等の内容自体に照らし、必ずしも職場の実情や従前のXの職場での勤務状況を考慮した上での判断ではないものである。
・・・一般的に、主治医の診察は、患者本人の自己申告に基づく診断とならざるを得ないという限界がある一方で、リワークプログラムにおいては、精神科医の指導の下、専門的な資格を持った臨床心理士が患者本人のリワークへの取組みを一定期間継続的に観察し、その間に得られた参加者の行動状況等を客観的な指標で評価し、医師と共有した上で最終的に精神科医が診断するものであることは前判示のとおりであり、Xが主張する事由をもってその評価を重視すべきでないとはいえない

3 Xは、本件休職前に勤務していた部署以外に、配置される現実的可能性のある他の業務を行う部署として、給電所系統運用グループ及び支社総務グループに加え、Xが平成16年から3年間勤務していた工事部門があると主張する。
しかしながら、給電所系統運用グループは、時々刻々と変化する電気の流れや電圧、周波数を24時間体制で監視し、電力の品質を保持しながらの安定的供給を担当する部署であり、深夜勤務を含む三交代制の勤務体制であり、電気や電圧の調整のために操作をする場合、ミスがあると広域停電等の可能性があるため、緊張を強いられるほか、社外の者とのやり取りが適切に行える必要がある部署であること、支社総務グループは、そもそも、Xのように技術職で採用された社員が通常配置される職場ではない上、業務内容も、人事、労務、損害賠償、経理、労働組合対応、自治体対応、非常災害、リスク管理対応等の多岐にわたる業務を担当する部署であり、他部署や社外とのやり取りが要求される部署であることが認められ、Xに精神疾患についての病識がなく、ストレス対処の習得が見込まれない状況であったことに照らし、Xにとっては、新たに配属された部署で業務を覚えたり、一から人間関係を構築すること自体が大きな精神的負担となり、精神状態の悪化や精神疾患の再燃を招く可能性があるというべきであるから、いずれの部署も、Xが配置される現実的可能性があったということはできない
また、Xが精神的な問題を感じてD産業医と初めて面談したのは、工事部門に所属していた平成18年であること、送電グループに戻った後も、療養休暇に入る直前までには、精神疾患により服薬治療をしているXのため、業務の負担軽減が行われ、本来行うべき外勤業務は担当せず、ほぼ内勤業務のみとなっていたにもかかわらず、本件休職に至ったことなどの事情を総合すると、工事部門についても、Xが配置される現実的可能性があったと認めることはできない

上記判例のポイント2は非常に参考になりますね。

復職の可否については極めて専門的な判断が求められますので、必ず顧問弁護士に相談の上、慎重に進めてください。

本の紹介797 営業とは道である。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
営業とは道である。 本物の営業マンを目指すあなたへ

著者は、元ソニー生命のライフプランナーの方です。

現在は経営コンサルタントをされているようです。

タイトル通り、営業とは何か、ということが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・お坊さんが修行をするのとも一緒です。お坊さんの説法がなぜ聞き手に響くかといったら、苦しい修行をした人だからでしょう。修行もしていない、急にお坊さんになったと言われたら、誰も説法を聞かないでしょう。・・・だから人は、がむしゃらにやってみた人のメッセージを聞きたい。修行を経験していないと、ミッションももてないし、メッセージも伝えられない、聞いてもらえないということなのです。」(97~98頁)

何を言うかよりも誰が言うかということですね。

同じ話をしても、人によって心に響くかどうか変わりますよね。

この違いはどこから来るのでしょうか。

私は、自分の力で悪戦苦闘しながら1からはじめて結果を出してきた人を信用します。

やはり苦労して結果を出さないと響かないのですよ。

解雇267 休職期間満了時の復職の可否判断における労働者の生活状況に関する記録の考慮(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、欠勤は業務外の疾病によるものであり、傷病休職の期間満了による雇用契約の終了を認めた裁判例を見てみましょう。

幻冬舎コミックス事件(東京地裁平成29年11月30日・労経速2337号16頁)

【事案の概要】

X及びY社が労働契約を締結していたところ、使用者であるY社は、労働者であるXが精神的な障害を発症し、一定の期間出勤をせずに休業したことについて、私傷病による欠勤として取り扱い、さらに、就業規則等の定めに基づくものとして、Xに対して一定の期間の給食を命じた上で、当該休職の期間の終了をもってXがY社を退職したものとして取り扱い、Xが休職した期間以降の期間に係る月額賃金及び賞与をXに支払わなかった。

本件は、Xが、主位的に、この欠勤としての取扱い、休職命令及び退職の取扱いが当該就業規則の定める要件等を欠く違法なものであり、当該労働契約における労働者たる地位を有するXには民法第536条第2項の規定に基づいていわゆるバックペイを請求する権利が発生している旨等を主張して、Xが当該労働契約上の権利を有する地位に在ることの確認並びにXが上記の休職及び休職をした期間+遅延損害金の支払をY社に求めるとともに、時間外の割増賃金が生じている旨を主張して、当該割増賃金+遅延損害金の支払をY社に求め、予備的に、当該休職命令及び退職の取扱いが違法でなかったとした場合の当該割増賃金+遅延損害金の各支払をY社に求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、53万6967円+遅延損害金を支払え

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、同月11日の時において、自らの心身を適切に管理して行動することが困難な状態にあり、営業職としてはもとより、編集職としても、本件労働契約においてXに履行することが求められていた債務の本旨に従った労務の提供(Xは、前職の経験を前提として期間の定めのない労働契約である本件労働契約を締結し、一時はY社の部長職を任され、更には月額39万円の賃金を得ていたことに鑑みると、いわゆる管理職に比肩すべき相応の能力の発揮を期待されていたものと解すべきである。)に重大な支障を来す状態にあって、休職を命ずることが相当である状態にあったものというべきである。
・・・このような経緯によれば、Xは、休職をすること自体についての不満を有していたとしても、その精神的な障害の状態等に鑑み、Y社からの説得に応じて、自らの意思により、有給休暇を取得し、続けて本件休職期間中に欠勤をしたものと認めるのが相当である。

2 C常務及びE副部長とF医師が同月30日に面談を行ったが、当該面談において、F医師がC常務らに対してXに生活状況の記録をさせることはしていない旨を述べたことから、C常務らがF医師に本件生活・睡眠表を見せたところ、F医師は、本件生活・睡眠表を見た上で、C常務らに対し、Xから生活リズムがおおむね整っていると聞いていたが、本件生活・睡眠表を見ると、XにはY社における通常の勤務はできないと思われること、Y社が出版社であるとはいえ、Y社の従業員がY社に午前10時くらいに出社すべきことは常識であると思われることを述べた。

3 F医師の作成に係る復職診断書や原告訴訟代理人に対する回答によっても、営業職としてはもとよりとして、編集職としても、本件休職期間の終了時までに本件労働契約の債務の本旨に従った労務を提供することができる程度にまでXの精神的な障害が回復したものということはできない
なお、Xは、仮にXが復職の当初にY社の所定労働時間どおりに労働することが困難であったとしても、Y社がXの復職後の就業に配慮する措置を講じていれば、通常の勤務に程なく復帰することができた旨を主張しているが、本件全証拠を精査しても、その裏付けとなるべき的確な証拠はない。

上記判例のポイント2は大変参考になります。

復職の可否についていかなる視点で判断すべきについてはとても悩ましいですが、生活状況の記録等から客観的に判断するように努めることが大切です。

決して、主治医がこう言っているから、産業医がこう言っているからという形式的な理由だけで判断をしてはいけません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介796 マナーより大事な品性がにじみ出る立ち居振舞い(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
品性がにじみ出る立ち振舞い: 自分を美しく躾ける教科書

美しい所作を目指す人は是非、読んでみてください。

どこに行っても恥ずかしくなくなると思いますので。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

毎日の過ごし方はいやおうなしに、表情ににじみ出てくるものなのだ。毎日、特に緊張感もなく、マンネリ化した生活を繰り返しているだけだと、どこか間延びした、しまりのない顔になってしまう。『20歳の顔は自然から授かったもの。30歳の顔は自分の生き様。だけど50歳の顔には、あなたの価値がにじみ出る』ココ・シャネルの言葉だ。」(151頁)

年齢を重ねるごとにこのことをよく思います。

顔つきや体つきにそれまでの生き様や生活習慣が如実に出てしまうのです。

こればかりは化粧や服装ではごませないのです。

日々の積み重ねが結果として顔つき、体つきに出る以上、日々の習慣を変えることでしか、それらを変えることはできません。

解雇266 採用内定の取消しと期待権侵害を理由とする慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、学部開設に伴う教員採用内定の成否と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人東京純心女子学園(東京純心大学)事件(東京地裁平成29年4月21日・労判1172号70頁)

【事案の概要】

本件は、被告の看護学部設置認可にかかる教員名簿に登載されたにもかかわらず、教員として採用されなかったXらが、Y社に対し、Xらを採用しなかったことは、(1)採用内定の取消しであって、債務不履行(誠実義務違反、民法415条)又は不法行為(民法709条)に当たる、若しくは(2)原告らの期待権を侵害する不法行為(民法709条)に当たると主張して、X1につき損害賠償金1166万1565円及びX2につき損害賠償金678万円+遅延損害金の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、X1に対し、55万円+遅延損害金を支払え。

Y社は、X2に対し、55万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 X1は、平成27年4月以降のY社への採用が内定してはおらず、Y社には採用内定取消を理由とする不法行為責任は認められない
しかしながら、上記の経緯によれば、X1が、Y社の看護学部設置にむけて勤務し、X1を教員とする教員審査において、X1を教員として採用しない旨の指摘を受けてはいないことから、被告の看護学部新設が認可された後においては、X1とY社との間で、教員名簿記載の科目を担当する教授としての労働契約が確実に締結されるであろうとのX1の期待は法的保護に値する程度に高まっていたことが認められる

2 この点、Y社は、X1は平成27年3月にT大学への教員就任承諾書を提出し、同年4月頃から同大学での勤務をしたことから、X1に期待権はない旨主張する。
しかし、本件証拠によっても、X1が同大学への就職活動をした時期は明らかでなく、X1の本人尋問の結果によれば、X1は同大学から教員就任承諾書等の書類の提出を求められたのは同月12日であったと述べている。
そうすると、X1がT大学への就職活動をしたのは、Y社による期間満了通知の後(平成27年1月19日の後)であるとも考えられるし、同大学の労働条件がY社における労働条件より好待遇であるとは限らない。
したがって、同大学への就職を理由にX1の期待権を否定することはできないから、上記判断は変わらない。

3 そして、Y社は、平成26年4月以降のX1の働きぶりから平成27年4月以降の採用をしないこととしたものであるが、Y社の学部設置認可に至るまで、Y社からX1に対し、その働きぶりに対して注意等をしていないところ、教員審査(学部設置認可手続上のものではあるが、労働契約締結過程にあると認められる。)を経たにも関わらず、面接等の採用手続すら執らないとしたのは、誠実な態度とは言いがたい
そうすると、Y社がX1を採用しなかったことは、労働契約締結過程における信義則に反し、X1の期待を侵害するものとして不法行為を構成するから、Y社は、X1がY社への採用を信頼したために被った損害について、これを賠償すべき責任を負う。

4 Xらはそれぞれ逸失利益を損害として主張する。
期待権侵害に基づく損害賠償の対象は、Y社への採用を信頼したためにXらが被った損害に限られ、採用されたならば得られたであろう利益を損害として請求することはできない。
したがって、逸失利益は損害に当たらないから、Xらの上記主張は採用しない。

5 X1は移転費用等を損害として請求するが、これが期待権の侵害と相当因果関係を有する損害であるとは認めがたい。

期待権侵害という構成で救済されています。

もっとも、認められる損害額は、ご覧のとおり低いため、費用対効果を考えるとなかなか厳しい戦いといえます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介795 さすが!と一目、置かれる人の気配り術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
さすが!と一目、置かれる人の気配り術  (だいわ文庫)

タイトル通り、気配りとはいかなるものかについて書かれている本です。

気配りができる人は自然とやっていることです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『下足番はお客さまがお帰りになるまでに、靴をきれいに磨かせていただいておるんです。それに気づいて、下足番に『ありがとう』といって、ちょっと心づけを渡してくださる。こんなお客さまは、また、お出かけいただきたいなあ、と心の底から思いますね。』
本音だと思う。それに、こうした人は、ほぼ例外なく成功の階段を上がっていき、結果的に上得意になることが多い、ともいっていた。」(63頁)

こういう気配りができる人は素晴らしいですよね。

みんなができることではありませんが、だからこそこういうことが自然とできる人は輝きますね。

ある日突然できるようになることはありません。

最初は意識して自然な気配りの練習をするほかありません。

また、気配りや配慮ができる方とできるだけ一緒にいて、近くで観察をすることもとても役に立ちます。

本当に力のある人は、決してお店の方に対して横柄な態度はとりませんし、決して威張りません。

お店の方に威張って、何の得があるのでしょうか。みっともないだけです。

不当労働行為195 組合員に対する残業時間を非組合員よりも少なくするように指示したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合員に対する残業時間を非組合員より少なくするよう指示したことが不当労働行為とはいえないとされた事案を見てみましょう。

東豊商事事件(東京都労委平成29年10月17日・労判1172号92頁)

【事案の概要】

本件は、①組合員に対する残業時間を非組合員より少なくするよう指示したことが不当労働行為にあたるか、②組合員に対して会社都合休みを多く割り当てたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

①は不当労働行為にあたらない

②は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・いずれの比較においても組合員が非組合員よりも残業時間が少ないことが認められる。その原因について、組合は、会社が組合員に対し遅出を指示したり、ジャスター当番を割り当てなかったりしたためである旨主張する。
・・・以上のことから、遅出の指示及びジャスター当番を割り当てないことについては、組合員であること又は正当な組合活動を理由とした不利益取扱いには当たらない。したがって、組合員と非組合員との間に残業時間の差が生じていたとしても、組合がその原因であると主張している、遅出の指示及びジャスター当番を割り当てないことについては不当労働行為に当たらない。

2 会社は、特定の従業員に指示が偏らないように十分配慮を行っていると主張するが、13倍を超える差を偏りがないとはいえず、会社都合休みの割当てについて、組合員と非組合員の契約社員との間に有意な格差が認められることから、会社の主張を認めることはできない。

3 当日乗換え拒否及び昼残業拒否は、組合が「順法闘争」として継続しているものであり、昼残業については組合員以外の全員が行っていたことが認められる。そうすると、会社の示す基準は、事実上組合員を指し示すこととなり、結局会社は、合理的な理由なく組合員に多くの会社都合休みを割り当てる基準を運用していたこととなるから、このような会社の対応は、組合員に対する差別的取扱いであるといわざるを得ない。

組合員と非組合員について異なる取扱いをする場合、合理的な理由を説明できるかどうかが結果を分けます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。