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今日は、各手当の「月によって定められた賃金」該当性に関する裁判例を見てみましょう。
川崎陸送事件(東京地裁平成29年3月3日・労判ジャーナル72号55頁)
【事案の概要】
本件は、従業員ら(3名)において、それぞれ平成24年7月から平成26年8月までに支給されるべき時間外労働等に係る割増賃金等の支払、労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
未払時間外労働等割増賃金等支払請求は認容
付加金等支払請求は一部認容
【判例のポイント】
1 「出来高払制」とは、賃金の対象が労働時間ではなく、労働者の製造した物品の量・価格や売上げの額などに応じた一定比率で額が定まる賃金制度をいうものと解されるところ、従業員らの従事する業務は、乗務職としてトラックに乗務し、トラックを運行するとともに、その運行の前後における積荷の積卸作業に従事するものであり、具体的な運行及び積荷の積卸しの内容はY社の指示によって決まるものであるから、本件各手当が当該手当の支給対象とするXらの労務の内容は、労働時間内に提供が求められる労務の内容そのものであること、しかも、地場手当は、実際には1日につき5000円の支給となっていて、運行回数、運送距離ないし走行距離、積荷の積載量、売上げといった作業の成果とは関連しておらず、乗務日数に応じて支給される手当といえること等から、本件各手当は、出来高払制賃金に当たらないと考えられる。
2 一般的に割増賃金等の支払がされないことは、付加金支払を命ずることを相当とする芳しからぬ事情であり、本件においても、問題となった本件各手当が割増賃金の基礎賃金として扱われず、ひいて過少な割増賃金の支払しかされていなかったことが認められるが、他方において、本件における本件各手当が固定給であるのか出来高払制賃金であるのかは、その判別が明確かつ容易にできるものとは言い難く、してみると、その判断を使用者であるY社において誤ったとしてもやむを得ない点もあり、将来にわたる違法行為の抑止等の観点からは、必ずしも未払割増賃金相当額全部の付加金の付加が適切であるとも言い難く、こうした事情を総合して考慮すると、本件においては、付加金として未払時間外割増賃金等の約25%相当の各支払を命じることが相当である。
業務内容からして「出来高払制」ということは考えられないとして出来高払制賃金に当たらないと判断されています。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。