解雇262 勤務態度不良を理由とする解雇と相当性判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、降格前の地位確認及び解雇無効地位確認請求に関する裁判例を見てみましょう。

ドラッグマガジン事件(東京地裁平成29年10月11日・労判ジャーナル72号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのない雇用契約を締結して就労していた元従業員Xが、Y社のした降格及び解雇が無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約に基づき、降格前の職制等級に基づく雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後本判決確定の日までの未払賃金等の支払、平成28年4月以降毎年年7月及び12月の賞与等の支払を求めるとともに、上司による違法なパワーハラスメントがあったと主張して、民法715条又は安全配慮義務違反による不法行為に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

降格前の職制等級に基づく雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求は棄却

解雇無効地位確認請求は認容

損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xには上司の指導や指示に素直に従わないこと、同僚との協調性が乏しいなどの業務上の問題点が認められ、Xに対し上司が問題点の改善を求めて指導したにもかかわらず、Xの勤務態度に変化が見られなかったこと、本件降格処分による賃金の減額は5000円と比較的少額であることなどを踏まえると、本件降格処分は客観的に合理的な理由があり、相当というべきであるから、人事権の範囲内の措置として有効である。

2 仮に、Xに認められる問題点(上司の指導・指示に素直に従う姿勢が乏しいこと、同僚との協調性が乏しいこと)がいずれかの解雇理由に該当するとしても、入社後1年余りの間はXの業務態度がさほどY社の社内で問題になることはなかったこと、Xには上司の指導や指示に素直に従わない面が認められるとはいえ、その態様は悪質なものとまではいえないこと、Xは関心のある分野については積極的に取材や執筆業務を行っていたこと等の事情を総合考慮すると、Xが前職で5年のキャリアを有することや、Y社が比較的小規模な組織であること等の事情を勘案しても、本件解雇は、いまだ社会通念上相当であるとは認められないというべきである。

3 Y社において本件解雇後のXの賞与の支給の実施及び具体的な支給額又は算定方法についての決定がされたとは認められず、また、これについての労使間の合意や労使慣行が存在したとは認められないから、Xの具体的な賞与請求権が発生したとはいえず、賞与に関するXの請求には理由がない。

解雇については相当性の判断で救われています。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。