賃金150 雇用契約締結の条件としての出資依頼と公序良俗違反の当否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、雇用契約に基づく未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

クリエイト・ジャパン事件(東京地裁平成29年5月29日・労判ジャーナル72号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社との間で平成27年9月7日に雇用契約を締結し、平成28年1月29日までの間、労務を提供したとして、Y社に対し、未払賃金約276万円等の支払を求めるとともに、Y社のXからの出資金の受領は、公序良俗違反又は詐欺に当たるとして、Y社に対し、不当利得に基づく利得金返還請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払賃金等支払請求は認容

不当利得返還請求及び損害賠償等請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社が長期間無職であるXに対して入社の条件として100万円の出資を求めたことは公序良俗に反すると主張するが、仮に上記出資が雇用契約締結の条件となっていたとしても、直ちに公序良俗に反するとはいえず、また、Xは、Y社はXを株主として扱う意思がないのに、これがあるように装って、Xを欺罔し、出資金名下に100万円を領得したと主張するが、Y社は、株主総会を開催せず、特段の事情もなくXからの株主名簿閲覧請求にも応じていないなど、会社法所定の手続を履践していないことが認められるものの、Xの請求に応じて株券を発行しており、Xを株主として扱う意思がないにもかかわらず、これがあるように装って、Xを欺罔し、出資金名下に100万円を領得したとまで認めることはできないから、XのY社に対する不当利得に基づく利得金返還請求ないし不法行為に基づく損害賠償請求には理由がない。

100万円の出資を求めたことが公序良俗に反しないとの判断は裁判官によって異なる可能性があると思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。