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今日は、酒気帯び運転中の事故に基づく未払退職金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。
日本通運事件(東京地裁平成29年10月23日・労判ジャーナル72号32頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員が、Y社を退職したとして、Y社に対し、退職金248万9105円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容(5割認容)
【判例のポイント】
1 Xは、本件事故前日が公休日であったとはいえ、断続的に飲酒をするとともに、就寝の際、医師から飲酒時の服用を禁止されていた精神安定剤等を服用したため、本件事故当日の朝、ふらつき感を覚え、発熱まであり、欠勤するに至ったにもかかわらず、更に飲酒を続けた上、高濃度のアルコールを身体に保有する状態で本件自動車を運転した結果、運転を誤って営業中のスーパーマーケットの玄関付近に自車を衝突させたというのであって、本件酒気帯び運転は、その態様が悪質であり、その行為に至る経緯に酌量の余地はなく、本件事故は、本件店舗に修理費162万円を要するほどの損傷を与えるなど、同店舗関係者及びその利用者らに与えた精神的衝撃も小さくなく、臨場した警察官に現行犯逮捕されるに至り、実名で新聞報道がされるなどしており、その社会的影響も軽視することはできないこと等から、本件懲戒解雇処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとはいえず、権利の濫用に当たらないから有効であり、Xは、本件懲戒解雇処分により社会を退職したものであり、退職慰労金規程3条1号所定の退職金不支給条項に該当する事由が認められる。
2 退職慰労金規程3条1号が、懲戒処分により解雇されたときは、原則として、退職金を支給しないとしながら、情状により減額して支給することがあると規定するところ、本件懲戒解雇処分における解雇事由は、私生活上の非行に係るものであること、Xは、本件酒気帯び運転まで、Y社において、26年以上の長期にわたり、懲戒処分等を受けることなく、真面目に勤務してきたこと、本件酒気帯び運転や本件事故について素直に認め、本件店舗に直接謝罪をするとともに、自ら加入していた自動車保険を利用して被害弁償をして示談し、宥恕されていること、Y社に対しても謝罪し、自ら退職届を提出していること、XがY社の従業員であったことまでは報道されておらず、Y社の名誉、信用ないし社会的評価の低下は間接的なものにとどまることが認められること等から、本件酒気帯び運転がXのそれまでの勤務の功労を全て抹消するものとは認め難いものの、大幅に減殺するものといえ、その減殺の程度は5割と認めるのが相当である。
退職金の請求をするケースでは、上記判例のポイント2のような周辺事情を丁寧に主張立証することが求められます。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。