解雇260 酒気帯び運転と懲戒免職処分の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、市元職員の酒気帯び運転と懲戒免職処分等取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

名古屋上下水道局長(懲戒免職処分取消請求)事件(名古屋高裁平成29年10月20日・労判ジャーナル71号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元職員Xが、酒気帯び運転で検挙されたことを理由として、Y社から受けた懲戒免職処分及び退職手当支給制限処分はいずれも裁量権を逸脱又は濫用した違法なものであると主張して、名古屋市に対し、本件各処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒免職処分取消請求は棄却

退職手当支給制限処分取消請求も棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件酒気帯び運転に係る車の走行時間及び走行距離が短く、検挙時のアルコール濃度も、懲戒免職処分が違法であるとされた類似事案の裁判例よりも低いから、本件酒気帯び運転の性質・態様は極めて悪質とまではいえず、むしろ比較的軽微との評価もあり得る旨を主張するが、Xの検挙時のアルコール濃度、Xが本件酒気帯び運転に至った上記経緯に照らすと、本件酒気帯び運転の性質及び態様が極めて悪質なものであることは明らかというべきであって、本件酒気帯び運転に係る車の走行時間及び走行距離、Xが指摘する他の裁判例の存在はいずれも上記判断を左右せず、また、市及びY社が、飲酒運転に対して厳しい姿勢で対処すべきであるという社会的要請の高まりを踏まえて旧取扱方針及び現取扱方針を制定するなどし、職員の飲酒運転の撲滅に向けて取り組んできており、そうした取組に反して、Y社の職員であるXが本件酒気帯び運転をしたことによる市政等に対する市民からの信用失墜の程度が低いものであったなどということはできないこと等から、Xの懲戒免職処分取消請求は理由がない

2 Xに有利に勘案されるべき事情(人的・物的被害が発生したことはうかがわれず、本件酒気帯び運転を隠蔽する行動はとっていないこと等)も存するとはいえ、特に、本件酒気帯び運転の態様が極めて悪質で、Xの責任は重大というべきものであることに加えて、退職手当が勤続報償的な性格を基本とするものであることを併せて考慮するときには、もはやXの過去の功績は没却されて、報償を与えるには値せず、退職手当の他の側面である生活保障的性格及び賃金後払い的性格が奪われることになってもやむを得ないものと認めるのが相当であって、退職手当支給制限処分が社会観念上著しく妥当を欠き、退職手当管理機関である処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したとは認められず、退職手当支給制限処分は適法であるから、退職手当支給制限処分の取消しを求めるXの請求は、理由がない。

Xに有利な事情を考慮してもなお、懲戒免職処分は有効であり、かつ、退職手当支給制限処分も有効と判断されています。

酒気帯び運転の危険性からすればやむを得ないのかもしれませんが、担当裁判官によって結論は異なりうるように思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。