不当労働行為191 団交における使用者の説明と誠実交渉義務違反(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、日々雇用労働者である組合員2名の賃上げに関する団交における会社の対応が不当労働行為とされた事例を見てみましょう。

千代川運輸事件(東京都労委平成29年5月23日・労判1167号144頁)

【事案の概要】

本件は、日々雇用労働者である組合員2名の賃上げに関する団交における会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 損益表は、Y社が、Y社の総勘定元帳等から、本件事業部門における車両1台当たりの売上げと経費の平均のみを抜き出し加工した資料であるところ、Y社は、損益表の基となる資料等から何ら組合に示していないので、組合は、損益表だけではその数字の真偽及び内容を十分に検討することができない。現に、損益表の売上げと経費には、運送業務以外の倉庫管理業務の売上げや、管理業務に従事する人の給料も含まれていたことが、本件審査手続において明らかになったが、Y社はそうした説明も一切していない
したがって、損益表やY社の5月1日付回答書や5月21日の団体交渉における説明は、本件事業部門に限ってみても人件費総額や運転手の平均年収の推移等の分かる資料の開示等を求める組合の要求に対し不十分なものであったといわざるを得ない。

2 さらに、本件団体交渉当時、Y社全体では黒字であり、このような状況下で実施された団体交渉において、賃上げ余力はない旨を説明していたのであるから、自らのかかる説明を裏付ける根拠として、組合の要求する4点の資料を全て提示するかどうかはともかくとして、少なくとも、組合が他部門を含むY社全体の経営状況と、その内訳としての本件事業部門の収支状況を正確に把握した上で、その内容を分析、検討して交渉に臨めるだけの資料を提示するなどして説明を行う必要があったというべきであり、損益表を提出して本件事業部門について説明したことをもって、組合の団体交渉に誠実に応じていたということはできない。

誠実交渉義務とは、換言すれば、会社が説明を尽くすということなので、賃上げをするかどうかということよりも、賃上げをしない理由を説明することが求められているのです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。