おはようございます。
今日は、社会福祉法人解散による元職員らの解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。
社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会事件(東京地裁平成29年8月10日・労判ジャーナル71号34頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で労働契約を締結していた元職員らA、Bが、Y社のした解雇が無効である旨をそれぞれ主張して、Y社に対し、Aらそれぞれが労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び民法536条2項に基づき本件各解雇後の賃金の支払をそれぞれ求めるとともに、本件各解雇が無効であることを前提に、Y社と全国手をつなぐ育成会連合会とは実質的に同一である旨を主張して、法人格否認の法理により、連合会に対し、上記と同様の請求をし、あわせて、Aらは、Y社及び連合会が共謀して不当な本件各解雇を行い、もって、Aらそれぞれに対する不法行為を行った旨を主張して、Y社及び連合会に対し、共同不法行為に基づき、精神的損害の賠償等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Y社が本来確保しておくべきことが公的に要請されている基本財産の取崩しが恒常化している中で、近い将来にY社の経営が困難となると判断したことは、客観的な根拠に裏付けられたものということができ、Y社には、Y社を解散することに伴い、人員削減の必要性があったものというべきであり、Y社は、希望退職の募集を行い、応募した者には退職金を増額しこれに加えて100万円を支給することとし、これを受け、上記募集を受けた職員ら合計6名のうち、Aらを除く4名は、上記希望退職の募集に応じたというのであるから、Y社は、Y社が当時行い得たAらの解雇を回避するための措置及びこれに代わり得るAらの負担の軽減のための合理的な措置を、相応に行っていたものというべきであり、さらに、Aらを含むY社の全職員がY社を退職したことが認められる事実に照らせば、本件各解雇に係る人選の合理性に欠けるところはないものというべきであり、そして、Y社は、訴外組合に対し、団体交渉に応じる意向を示し、Aらに対し、相応の説明をしていることをも踏まえると、本件各解雇の手続の相当性に殊更問題があったということはできないことから、本件各解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものとして、有効というべきである。
2 Y社が解散し、事務局を廃止してY社の職員を全員解雇するとのY社の判断が合理的なものであること、Y社は上記廃止に際してAらのみならずY社が当時雇用していた全従業員との雇用契約を終了させたことから、Y社に不当な目的があったとは認め難いものというべきであり、本件各解雇は有効であるから、AらのY社に対する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認の請求及び民法536条2項に基づく本件各解雇後の賃金の支払の請求には、いずれも理由がなく、また、Aらの連合会に対する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認の請求及び民法536条2項に基づく本件各解雇後の賃金の支払の請求は、本件各解雇が無効であることの前提とするものであるから、同様にいずれも理由がない。
上記判例のポイント1のようにしっかり手続きを進めていけば問題ありません。
慌てず、やるべきことをやることがとても大切です。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。