セクハラ・パワハラ38 セクハラと慰謝料の金額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、市議会議員のセクハラに対する職員の損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

市議会議員(セクハラ)事件(宇都宮地裁平成29年10月25日・労判ジャーナル71号26頁)

【事案の概要】

本件は、小山市の職員が、同市議会議員から、議員や同議会事務局職員などが参加する懇親会において、議員の席の隣に職員が座っていた際に、背中全体をなでるように触られたり、耳元に口を近づけたりされた、ステージ上でデュエットをする際に、職員の体を議員の方に引き寄せられ、職員の耳元に口を近づけたりされた、同懇親会終了後に電話で男女関係を強要されたなどのセクハラを受けたと主張して、議員に対し不法行為に基づく慰謝料200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

慰謝料30万円を認容

【判例のポイント】

1 事実1(議員が、本件懇親会において、議員の席の隣に座って選曲のためにカラオケの本を見ていた職員に対し、職員の背中や腰に手を回したり、背中全体をなでるように触ったり、職員の耳元に口を近づけたりした事実)は認められるが、事実2(議員が、本件懇親会において、職員と議員のデュエット中に、職員の体を議員のほうに引き寄せ、職員の耳元に口を近づけてきた事実)及び事実3(議員が、本件懇親会の終了後、職員に対し、電話で「俺の女になってくれ」などと言った事実)は認められず、事実1が職員の意に反して行われたことは、行為のとき職員が背中をそらすなどして不快感を示していることや本件懇親会後あまり期間が経過していない時期に他の職員や弁護士に話をしていることなどから明らかであり、事実1の行為は、相手の意に反する深いな性的言動と認められ、セクハラに該当するものであり、これは職員の性的自由ないし人格権を侵害するものであるから、不法行為が成立し、このような議員の職員に対するセクハラの態様・程度、職員がその後不安障害になったと診断されていること等から、職員が被った精神的苦痛を慰謝する金額は30万円をもって相当と判断する。

一般的なハラスメント事案については、裁判所は多額の慰謝料を認めてくれません。

ハラスメント事案については、そもそもそのような事実が存在したのか自体が争われることもあるため、原告としてはどのようにして立証するかを提訴前に十分検討しなければなりません。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。