おはようございます。
今日は、退職金規定に基づく未払退職金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。
栗本産業事件(大阪地裁平成29年9月15日・労判ジャーナル69号32頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、退職金規定等に基づく退職金550万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、新規程第6条に基づき、Y社に対する「退職特別功労金」の具体的な支払請求権を有することを前提に、退職金の支払を請求しているが、新規程第6条は、「功労金を支給する場合がある」、「金額についてはその都度定める」と規程していることから明らかなとおり、同条所定の「退職特別功労金」を個々の退職者に対して支給するか否か、支給する場合の具体的な金額については、会社の裁量判断に委ねられているものというべきであり、同条の規定のみに基づいて、XがY社に対して具体的に一定額の「退職特別功労金」の支払請求権を取得すると解することはできない。
2 Xは、Y社において、退職者に対し、企業年金以外に一定額の「会社支給分」の退職一時金を支給する旨の労使慣行が成立していた旨主張するが、約3年8か月の間に5名の退職者に対して退職金が支給されたというだけで、その支給が長期間反復継続して行われていたと評価し得るか疑問がある上、その支給額は一定ではなく、支給額の具体的な算定方法も明らかではないことに照らせば、Y社において、退職者に対し、企業年金以外に一定額の「会社支給分」の退職一時金を支給する旨の労使慣行が成立していたとは認められない。
裁判所が労使慣行の成立を認めてくれるのはよほどの場合に限られます。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。