おはようございます。
今日は、パソコン破損等に基づく懲戒解雇等無効地位確認請求に関する裁判例を見てみましょう。
社会福祉法人朝日新聞厚生文化事業団事件(東京高裁平成29年9月13日・労判ジャーナル69号38頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用されていたXがY社から本件懲戒処分を受け、平成28年3月2日付けで退職したことについて、本件懲戒処分は無効であると主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇の日の翌日以降の賃金及び賞与の支払いを求めたところ、原判決は、平成28年3月分給与の支払請求の一部を棄却したほかは、全部認容したことから、Y社が控訴した事案である。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 本件行為は、故意に本件パソコンの液晶画面を破損したものであるから、本件就業規則72条1項2号、8号、11号及び13号に該当するものであり、また、XはAに対し、Aが本件行為の際に本件事務所にいなかったことにすること等を提案し、Aの了承の下で、Y社による事情聴取や本件顛末書において、上記提案のとおり虚偽の説明を行っていたのであるから、かかる虚偽説明は、本件就業規則72条1項6号に該当するが、本件行為によって、本件パソコンのデータを破損するまでには至っておらず、Y社の経済的な損害は大きなものとまではいえず、金銭的な賠償によって償うことが可能なものであり、また、X及びAによる上記虚偽説明は、本件行為以外の他の非違行為を隠蔽するような性質のものではなく、Xが本件懲戒処分より前に懲戒処分を受けたことがないことを考慮すると、Xが本件就業規則72条に基づく何らかの懲戒処分を受けることは免れないとしても、懲戒解雇という労働契約上の地位を失う最も重大な懲戒処分は重きに失するものであり、社会通念上相当であるということはできないから、本件懲戒処分は、Y社がその権利を濫用したものとして、労働契約法15条により無効である。
パソコンの液晶画面を故意に破損させただけでは懲戒解雇は重すぎるというわけです。
結果、パソコンのデータまで破損されたとなると結論は変わり得ると思います。
破損されたデータの量、内容、復元可能性等が考慮されるとは思いますが。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。