Monthly Archives: 1月 2018

セクハラ・パワハラ35 長年にわたり仕事を与えなかったことに対する慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、在職中長年にわたって仕事を与えられなかったことにつき損害賠償請求を認めた裁判例を見てみましょう。

国立大学法人H大学事件(神戸地裁平成29年8月9日・労経速2328号23頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の職員であったXが、在職中長年にわたって仕事を与えてもらえず、差別的な扱いを受けるなどの嫌がらせをされて精神的苦痛を受けたと主張して、Y社に対し不法行為または債務不履行に基づき550万円の損害賠償+遅延損害金を請求する事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、50万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ」の平成24年1月30日付け報告書は、職場のパワハラの概念とその行動類型を次のように説明している。当裁判所もこれを適切なものとして採用することとする。

2 業務上の合理性がないのに、Y社がXに対し長年にわたって仕事をほとんど与えず、研修も受けさせなかったこと、学術情報チーム所属当時に輪番制の事務を割り当てなかったことは、パワハラにあたる。これはXの校務員としての雇用関係上の人格的利益ないし労働者としての人格的利益を侵害する不法行為を構成する。
・・・Y社が成立する前の大学は国の行政機関であったし、Y社も政府からの出資を資本金とし、税金等でまかなわれる政府からの交付金を財源としている。給与は職務の対価であるから、特定の職員に対し長期間にわたりほとんど仕事をさせないでおきながら給与を支給し続けることは、国民に対する背信行為であり、許されるはずもない

3 Xは病気休職から復職した平成10年4月から、学術情報チームにおいて継続的に仕事が与えられ、開館準備行為、書架整理作業を順次割りあてられるようになった平成23年3月頃までの間、約13年間にわたって上記のパワハラを受けた。平成16年にうつ状態、平成17年に自律神経失調症、平成22年に混合性不安抑うつ反応と診断されており、このパワハラがXの精神状態に与えた影響は小さくない
他方、Xは平成9年の減給処分直後から複数回職務遂行上の指導を受けたにもかかわらず、職務に精励し他の職員との人間関係を改善するための努力を十分にしなかった。上記のとおり平成23年春頃以降、Xへの対応は改善されたにもかかわらず、同年8月には学術情報課長に土下座や長時間の正座をさせるなどの強要等の事件を起こしている。Xの粗暴な言動や職場における不届きなふるまいは平成9年の減給処分の理由となった出来事においてすでに顕著に現れており、その後も上司に対して不穏当な発言をするなどしているから、Xが扱いにくい職員であったことはまちがいないXに仕事を与えることをXの上司に躊躇させた原因がX自身にあるのは否定できないトラブル防止のために職員に仕事を与えないという措置を長時間にわたってとることが許されないことはすでに述べたとおりであるが、慰謝料額の算定においてはこのような事情も十分に考慮すべきである。

上記判例のポイント3を読む限り、Xにも相応の原因があったようです。

慰謝料の金額自体は、毎度同じく高額にはなりません。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介758 お金持ちが肝に銘じているちょっとした習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
お金持ちが肝に銘じているちょっとした習慣

成功者たちの習慣をまとめた本です。

実際はさまざまな人がいるので一概には言えないところですが、素直な気持ちで参考にすればよいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『約束の時間さえきちんと守れない人間など、信頼できない』
ビジネス社会では、こう厳しく判断されてしまうことも胸に刻んでおくべきだ。
もう1つ、遅刻はクセだということも知っておこう。遅刻する人は、どんなに気をつけているつもりでも、なぜかいつも遅刻するのだ。・・・『いつも少し遅刻をしてしまうことが多い』という人は、決めるところをきちっと決められないルーズな性格なのだと自覚すべきだ。」(127~128頁)

「遅刻はクセだということも知っておこう」

間違いないですね(笑)

みなさんも思い当たる人、いませんか?

こういう人は早晩相手にされなくなるので放っておいてもどうってことはありません。

会食等の場に遅刻してくる人は、相手のことを重視していないからこそ遅刻をするのです。

「仕事が忙しくて・・・」と言い訳をするのを聞いたことがあります。

私の感覚ですが、待ち合わせの時間に余裕をもって来ている人のほうが仕事ができるので、おそらく遅刻してくる人よりも仕事は忙しいはずです。

たかが5分の遅刻、されど5分の遅刻なのです。

労働時間48 病院における休憩時間は手待時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、常勤・非常勤による労働と労働時間算定等に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人社団E会(産科医・時間外労働)事件(東京地裁平成29年6月30日・労判1166号23頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、雇用契約に基づき次の金員の支払を求める事案である。
(1)平成24年7月1日から平成26年4月20日までの所定時間外、法定時間外及び深夜の労働に係る残業代合計1761万8939円+遅延損害金
(2)付加金

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、1525万9177円+遅延損害金、8万9615円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 労働契約において、労働の時間帯、態様等に応じて異なる内容の賃金が定められている場合において、どちらに基づいて残業代算定のための「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」(労基法37条1項)を認定すべきか、問題となる。
労基法施行規則23条は、本来の業務とは別の「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」につき、労働基準監督署長の許可を得ない限り労働時間の規制から除外しているが、宿直又は日直の勤務でも「断続的な業務」に当たらないもの又は労働基準監督署長の許可を得ないものは割増賃金に関する労働基準法37条を含む労働時間に関する規定が適用されるから、本来の業務に係る賃金が「通常の労働時間又は労働日の賃金」に当たり、本来の業務に係る賃金に割増を加えた賃金が支払われるべきと解される。この場合、宿直又は日直の勤務に係る宿日直手当その他の特別の賃金が定められていても、宿日直手当は、労働基準法施行規則23条に基づいて労働時間に関する規定の適用から除外されて割増賃金が発生しないことを前提とするものであり、宿直又は日直の勤務が全体として許可その他の適用除外の効力発生要件を満たしていないにもかかわらず、宿日直手当の金額に限って労働者に不利な効力を認めるべきではないから、「通常の労働時間又は労働日の賃金」には当たらないと解すべきである。本来の業務の延長であって「断続的な業務」に当たらない、又は宿日直手当が低廉に過ぎるものと判断されて労働基準監督署長の許可を得られないこともありうるところ、本来の賃金額を割増した割増賃金でなく、宿日直手当又はこれに宿日直手当若しくは本来の業務に係る賃金を基礎とした割増分のみを加えた賃金の支払で足りるものとすると、結局、使用者は、宿日直手当を低廉に定めることで、労働基準法施行規則23条の要件を満たさなくとも時間外労働等に伴う経済的負担を軽減できることになってしまい、相当でない
以上のよれば、Xの当直勤務については、本件常勤契約に基づく日勤に係る年俸を基礎賃金として、時間外労働等の残業代を計算すべきである。

2 使用者が当座従事すべき業務がないときに労働者に休息を指示し、又は労働者の判断で休息をとることを許していても、休息の時間を「午後○時○分まで」「○分間」などと確定的に定めたり、一定の時間数の範囲で労働者の裁量に任せたりする趣旨でなく、一定の休息時間が確保される保障のない中で「別途指示するまで」「新たな仕事の必要が生じる時まで」という趣旨で定めていたに過ぎないときは、結果的に休息できた時間が相当の時間数に及んでも、当該時間に労働から離れることが保障されていたとはいえないから、あくまで手待時間であって、休憩時間に当たるとはいえないというべきである。

3 Y社の労働時間の否認には一部理由がある。賃確法6条2項、同法施行規則6条4号、5号によれば、「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争っている」場合又はこれに準ずる事由の存する期間は同法6条1項の年14.6パーセントの利率の適用を免れることができるから、本判決が確定するまでの間は、上記利率の適用を免れることができ、遅延損害金の利率は民法所定の年5パーセントにとどめるべきである。ただし、本判決が確定すれば、上記期間に当たらないことは明らかであるから、本判決確定の日の翌日以降は上記利率を適用すべきである。

上記判例のポイント2については、病院での勤務状況に鑑みれば使用者側の主張も理解できないことはありませんが、労基法上の議論としてはやはり難しいものがあります。

これから先ますます人手不足になってきますので、このような問題は立法上解決されない限り争いはなくならないでしょうね。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介757 運命転換思考(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
運命転換思考 一生かかっても身につけたい5つの「働き方」改革

成功者の考え方や習慣が書かれています。

とても参考になる良い本だと思います。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『素直さを持ちなさい』メンターから、いまでもいわれる言葉です。素直さは、成長にもつながります。素直な人は、どんな人からも学びます。貴重な教訓を学んだら、それをすぐに生かし、自身の成長に結びつけていきます。だから素直さとは、成功の必須条件といわれるのです。」(133頁)

「素直さとは、成功の必須条件」

この言葉を素直に受け入れられるかどうかが成功の必須条件なのです。

自分のメンターの教えを素直に聞き入れる。

素直に聞き入れられないのなら、そもそもメンターなんていてもいなくても同じです。

成功している人はこのことをよくわかっているので、言われるまでもなくみんな自然とやっているのです。

労働時間47 専門業務型裁量労働制が無効と判断される理由(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、専門業務型裁量労働制と労使協定に関する裁判例を見てみましょう。

京色彩中嶋事件(京都地裁平成29年4月27日・ジュリ1514号116頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社に対し、時間外手当のほか、賃金減額の無効、有給休暇を消化した日の未払い賃金、付加金、長時間労働によりうつ病に罹患したことについての不法行為又は債務不履行である安全配慮義務違反による損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

 Y社は、X1に対し、934万0114円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X1に対し、165万円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X1に対し、500万円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X2に対し、277万1777円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X2に対し、157万6922円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X3に対し、185万2680円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X3に対し、80万5288円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X4に対し、306万6332円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X4に対し、136万4085円+遅延損害金を支払え。

【裁判所の判断】

1 専門業務型裁量労働制を採用するためには、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定を行うことを要する(労基法38条の3第1項)。
また、個別の労働者との関係では、専門業務型裁量労働制を採用することを内容とする就業規則の改定等により、専門業務型裁量労働制が適用されることが労働契約の内容となることを要する。

2 Y社の平成22年秋頃の従業員数は合計19名、専門業務型裁量労働制の採用に当たり対象となる従業員は11名であるところ、Cが労働者の過半数を代表する者とされた際の選出の手段、方法は不明であり、協定届上「推薦」とあるが、C本人及びXらを含むY社の従業員合計6名はいずれもCを従業員として選出するための会合や選挙を行ったことはないと述べており、これらの従業員は、また、同様に、平成23年の就業規則改定に際して労働者代表を選出するための会合や選挙を行った事実もないと述べている。
これに対し、Y社は、労働者代表の選出は、社会保険労務士の指示に従い、従業員のうちの事務を担当していたDに任せていたと述べるのみであり、その具体的な選出方法について何ら説明することができず、結局のところ、当該事業所に属する従業員の過半数の意思に基づいて労働者代表が適法に選出されたことをうかがわせる事情は何ら認められない

3 就業規則が、平成23年の改訂の前後を通じて実際にY社の事務所内の棚に保管され、従業員が手に取れる状態となっていたこと、また、その保管場所が従業員に周知されていたことを裏付ける客観的な証拠はない。むしろ、平成26年7月に行われたY社と労働組合(b労)との団体交渉において、組合側から就業規則の設置場所を聞かれ、Y社側の弁護士が事務所内のAの座っているところの本棚にあると聞いていると説明するのに対して、X1が見たことがないと述べていることに照らすと、保管場所が従業員に周知され、いつでも閲覧し得る状態になっていたということはできないことが明らかである。

4 ・・・このようなY社による理由のない降格、賃金減額のストレスと、長時間労働の負荷とは、時期的にはうつ病の発症の直前ではないものの、これらを解決するために労働組合に加入したX1に対して、さらに不当労働行為が行なわれていること、他に、当時、X1にうつ病の発症の原因となるようなストレスがあったことをうかがわせる事情は特段認められないことからすると、X1のうつ病の発症は、Y社の上記行為に起因するものと推認することができる。
したがって、X1に、減額分の賃金の補填や時間外労働に対する対価の支払のみではまかなえない精神的苦痛を与えたものということができる。
以上の経緯を総合考慮すると、X1に生じた精神的苦痛を慰謝するには150万円をもって相当と認める。

どえらい金額になってしまっていますね。

上記判例のポイントのとおり、法律上求められている手続を無視すると最終的にはこうなってしまいます。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介756 ダークサイド・スキル(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

帯には「きれいごとだけでは、人は動かない!」と書かれています。

サブタイトルは「本当に戦えるリーダーになる7つの裏技」です。

個人的に裏技は好きではありませんが、役に立つ内容であれば素直に受け入れます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

チャンスはどこに転がっているかわからない。飛ばされたと思った赴任先が、ホットな新興市場としてスポットライトを浴びるかもしれない。難解なタスクを与えられたとしても、真面目に向き合っていれば、神風も味方して、想定外の結果を出せることができるかもしれない。
むしろ、自分からリスクをとらず、失敗しないように、負けないようにして生き残ってしまった人は、たとえ上に立っても、人を率いて強いチームをつくることはできない。踏み絵から逃げてしまうような人は、リーダーの資格はないのである。」(148頁)

全く同感。

失敗しないことばかりを考えているリーダーに魅力はありません。

誰がそんなリーダーについていくのでしょうか。

リスクと責任を負って、チャレンジしていくリーダーにみんなついていくのです。

プレーヤーとして優秀な方が、マネージャーとしては必ずしも優秀でないということはよくある話です。

両者で求められる力が異なる以上、当然のことです。

「踏み絵から逃げてしまうような人は、リーダーの資格はないのである」

まさにその通りです。

解雇253 起訴休職期間満了を理由とする解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、起訴休職期間の満了を理由とする解雇が有効された裁判例を見てみましょう。

国立大学法人O大学事件(大阪地裁平成29年9月25日・労経速2327号3頁)

【事案の概要】

国立大学法人であるY社の歯学研究科の助教として勤務していたXは、平成24年4月5日、傷害致死の公訴事実により起訴されたことで、Y社の定める起訴休職制度に基づき休職処分を受け、その後、2年の休職期間が満了したことを理由に、平成26年5月2日付けで分限解雇となった。

本件は、Xが、①主位的には、上記解雇は無効であると主張して、Y社との間の雇用契約に基づき、同契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、身柄拘束を解かれた後である平成27年4月から本判決確定の日までの賃金+遅延損害金の支払を求め、②予備的に、Y社との間でXを再雇用させる旨の合意が成立していたのにこれに違反したと主張し、債務不履行に基づく損害賠償として、。平成27年4月から17か月分の賃金相当額+遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 一般に労働者が起訴された場合、勾留等の事情により、当該労働者が物理的に労務の継続的給付ができなくなる場合があるほか、勾留されなかった場合でも、犯罪の嫌疑が客観化した当該労働者を業務に従事させることにより、使用者の対外的信用が失墜し、職場秩序の維持に障害が生じるおそれがある場合には、事実上、労務提供をさせることができなくなる。起訴休職制度は、このように、自己都合によって、物理的又は事実上労務の提供ができない状態に至った労働者につき、短期間でその状態が解消される可能性もあることから、直ちに労働契約を終了させるのではなくm、一定期間、休職とすることで使用者の上記不利益を回避しつつ、解雇を猶予して労働者を保護することを目的とするものであると解される。
以上のような起訴休職制度の趣旨に鑑みれば、使用者は、労務の提供ができない状態が短期間で解消されない場合についてまで、当該労働者との労働契約の継続を余儀なくされるべき理由はないから、不当に短い期間でない限り、就業規則において、起訴休職期間に上限を設けることができると解するのが相当である。
・・・以上の点に鑑みれば、起訴休職期間の上限を2年間とする本件上限規定は、合理的な内容(労契法7条所定の「合理的な労働条件」に該当するもの)であると認められる。

2 Xは、平成24年4月5日に傷害致死という重大な犯罪の嫌疑により、起訴され、勾留された状態が継続し、平成26年2月7日に保釈許可決定が出されて、一時、釈放されたものの、同月20日の一審判決の結果、再び勾留され、休職期間満了時も勾留されていたのであって、Y社に対する労務の提供ができない状態が継続していたこと、懲役8年の一審判決が出されたことにより、休職期間満了時以降も、少なくとも相当期間勾留が継続し、労務の提供ができない状態が継続することが見込まれていたこと、以上の点が認められ、これらの点に鑑みれば、以上のようなY社に対する労務の提供ができないXについて、降任、降格又は降給にとどめる余地がなかったことは明らかであって、Xについては、本件解雇時点において、Y社との「雇用関係を維持しがたい場合」にあったと認めるのが相当である。

3 Xは、本件解雇時において、実母に対する傷害致死の容疑で勾留され、Y社に対して労務の提供ができない状態が継続しており、一審において懲役8年の有罪判決を受けたことにより、その後も相当程度の期間、勾留が継続し、Y社に対する労務の提供ができないということが見込まれる状態にあったと認められる。また、本件解雇は、平成26年2月20日に宣告された懲役8年の一審判決から約2か月半後にされたものであるところ、その間に、控訴審の審理が行われるなどして、一審判決が破棄されることをうかがわせる新たな事情が生じたことを認めるに足りる的確な証拠はなく、Y社が同破棄を予見することができたとは認められない

ちなみに、Xは、刑事事件の控訴審において、平成27年3月11日、暴行罪により、罰金20万円の判決が言い渡され、釈放されています。

それゆえ起訴休職期間が争点となることは理解できますが、2年間という相当長期にわたる起訴休職の期間に合理性が認められることは争いがないのではないでしょうか。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介755 プロフェッショナルミリオネア(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
プロフェッショナルミリオネア<年収1億を生む60の黄金則>

稼ぐ人と稼がない人とではどこが違うのか、ということが書かれています。

みんながみんなそうではありませんが、本に書かれていることを意識して生活すれば結果は変わってくると思います。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

察することができる人と、できない人。気が利く人と、気が利かない人。
この違いは、相手にどれだけ意識を向けているかの差である。
相手の態度や表情、しぐさには、その人の状態が表れている。顔色が悪ければ、体調がすぐれないのだろうし、いつもより早口にしゃべるようなら、何か不安を抱えているのかもしれない。
・・・相手のことを察し、相手が苦手とすることや、不足と感じることを補える人が重宝され、かわいがられる。そして、こうした人に応援団がつくのである。」(29~31頁)

できる人は簡単にできるし、できない人は永遠にできない。

仕事から離れて日常の生活の中で、微差に気付く力を育むほかないように思います。

察することができる人、気が利く人というのは、物事を先回りして考えられるとてもクレバーな人です。

普段から相手の立場に立って物事を考える習慣が身についているのでしょう。

一朝一夕にはいかないとても高度な能力です。

できる人はできるし、できない人はできない。 そんな力だと思います。

賃金142 各種手当の基礎賃金該当性を否定する方法とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、特別な諸手当の基礎賃金該当性に関する裁判例を見てみましょう。

大阪内外液輸事件(大阪地裁平成29年9月28日・労判ジャーナル69号27頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社に対し、整備奨励金、出勤奨励金、無事故褒賞金及び運行作業手当が労働基準法37条に基づく時間外割増賃金の支払金額算定に当たっての基礎賃金に含まれていないことが労基法37条等に照らして違法無効であるとして、これらの手当等を基礎賃金に含めた場合の割増賃金と実際に支払われた割増賃金との差額賃金及び労基法114条に基づく付加金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 整備奨励金等は、労働者の車両整備作業の状況等といった1か月を超える期間における労働者の勤務状況等を勘案して、特別に支給されることが予定された賃金であり、2か月ごとに支給すること自体について、不合理かつ不自然であるとも認められないこと、労働協約等において、整備奨励金については奇数月、出勤奨励金及び無事故褒賞金について偶数月に支給していたこと等から、整備奨励金等は労基法施行規則の「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」であり、時間外割増賃金を算定するに当たり、整備奨励金等を基準外賃金として取り扱ったことが労基法等に違反するとはいえない

その手があったか!と思われた経営者の皆様は参考にしてみてください。

もっとも、現在、毎月支給している場合には、労働条件の不利益変更となりますので、必要な手続を踏まなければなりません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介754 ザ・ビリオネア・テンプレート(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
DVD付 ザ・ビリオネア・テンプレート  ~500億を動かす成功者がやっているたった1つの法則~

サブタイトルは「500億を動かす成功者がやっているたった1つの法則」です。

決してお金儲けの楽な裏ワザが書かれているわけではありません。

成功するために必要なマインドが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

その人の話しぶり、姿勢、使う言葉、服装・・・。随所にマインドセットは、にじみ出てしまいます。自分が何者であるのかは、じつは自分がもう決めてしまっているのです。どんな人生を生きてもいいはずなのに、自分で自分の人生を『こんなものだ』と制限してしまっているのです。」(26頁)

前回紹介した本と共通することが書かれています。

自分で自分の人生を制限してしまっている。

やりもしないうちから「どうせ無理」と勝手に決めつけて。

ため息ばかりつき、「めんどくさい」が口癖の人がどうして成功できるのでしょうか。

そんな人を誰が相手するでしょうか。

人は互いに目の前の人の「話しぶり、姿勢、使う言葉、服装」など、一挙手一投足からその人の人となりを判断します。

「この人といるとなんだかわからないけど元気が出る」

そんな人になれば、自然と人が集まってきます。