Daily Archives: 2017年12月20日

不当労働行為187 組合員をシュレッダー係に配転したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組に加入した営業専任職として勤務していたXをシュレッダー係に配転したことが不当労働行為にあたるかが争われた事例を見てみましょう。

引越社ほか2社事件(東京都労委平成29年7月18日・労判1165号94頁)

【事案の概要】

本件は、労組に加入した営業専任職として勤務していたXをシュレッダー係に配転したことが不当労働行為にあたるかが争われた事例である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 以上の点を総合的に勘案すると、Y社がシュレッダー係にXを配転した真の狙いは、同人の組合加入により現役従業員の処遇改善を初めて求められた同社が、組合の会社らに対する影響力が強まることを懸念し、これを抑制することを狙って、同人に不利益な取扱いをすることにより、組合の会社らにおける組織拡大を抑制することにあったとみざるを得ない
このようなY社の行為は、Xが組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるとともに、組合の弱体化を企図した支配介入にも当たる。

2 Y社が、Xをシュレッダー係の業務に就かせていたことについては、不利益取扱い及び支配介入であると認められるが、同人とY社との間では、Y社が同人に対して謝罪することを含む本件を和解が成立し、既に同人は、営業専門職に復職している。
しかしながら、本件の証拠に顕れているだけでも、27年3月29日から4月13日までの間に13名、9月22日に1名、28年7月22日に1名、7月28日から8月4日までの間に4名、8月6日に1名、9月2日から12日までの間に4名の組合員が組合を脱退しており、組合が大きな打撃を受けていることが認められる。こうした視点からみれば、本件和解が成立したことによっても、組合員に対するシュレッダー係への配転という不利益な取扱いによって損なわれた組合の団結権の回復措置は何らなされておらず、この点の救済の利益が消滅したとはいえないことから、本件の救済としては、主文第5項のとおり、Y社に文書交付及び掲示を命ずるのが相当と考える。

上記命令のポイント2は参考になりますね。

当該組合員と会社との間で和解が成立したとしても、前記のような事情を考えると、救済の利益は消滅していないと判断されるわけです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。