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今日は、役職定年制度導入を議題とする団交における会社の対応と不当労働行為に関する事例を見てみましょう。
北びわこ農協事件(滋賀県労委平成29年8月7日・労判1165号93頁)
【事案の概要】
本件は、役職定年制度導入を議題とする団交における会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 本件役職定年制度の内容は、基本給を2割カットし、管理職手当の支給もしないというものである。この制度の適用を回避するために、対象者が選択定年制度による早期退職を選択した場合においても、退職金の加算があるとはいえ、その後の嘱託職員としての再雇用においては、基本給は従前の半額になる。このように、本件役職定年制度は、職員にとって著しい不利益を生じさせるものといわなければならない。
このような著しい不利益を生じさせる人事制度の改変を行うのであれば、まず、制度改変の必要性について、具体的な根拠を示し、十分な時間をかけて、組合に対して説明を行うべきである。しかしながら、この点についてのY社の説明は、全く不十分なものであった。
2 以上の経過をみると、大幅な給与カットの導入が必要となる根拠について、組合が再三にわたって説明を求めたにもかかわらず、Y社は、具体的な財務状況の見通しすら示すことなく、単に経営状況が苦しい、若手の育成が必要だということを繰り返し述べるだけで、それ以上の説明をしていない。・・・このような状況では、Y社が本件役職定年制度導入の根拠について、基本的な説明すらしていないといわざるを得ず、Y社の交渉態度は不誠実であるというほかない。
したがって、本件団体交渉におけるY社の態度は不誠実であり、労働組合法7条2号の不当労働行為に該当する。
これでは、不誠実団交になるだけでなく、仮に民事訴訟を提起されて、労働条件の不利益変更が問題となっても、要件を満たさず、無効と判断されるおそれがあります。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。