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今日は、解雇無効地位確認等請求と社宅明渡等請求に関する裁判例を見てみましょう。
日経大阪中央販売事件(大阪地裁平成29年7月7日・労判ジャーナル67号14頁)
【事案の概要】
本件は、新聞配達業等を営むY社の元従業員Xが、Y社から解雇の意思表示を受けたが当該解雇は無効であるとして、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認とそれを前提とした賃金の支払いを請求(本訴)し、Y社は、Xに社宅を貸与していたが、解雇による労働契約の終了によってXは社宅の使用権限を失ったとして、Xに対し、社宅の明渡しと使用料相当損害金の支払いを請求(反訴)した事案である。
【裁判所の判断】
本訴請求は棄却
反訴請求は認容
【判例のポイント】
1 XとY社間の労働契約では、新聞配達が業務の内容とされており、即売用の新聞を他の営業所に届ける業務も当然に含まれると解されるうえ、その区域についても限定がないから、使用者が合理的な範囲で設定できるものと考えられるところ、同一の業務命令(ホテル等への即売分を毎日新聞堂島販売K営業所に配達するようにとの指示等)が繰り返されていたにもかかわらず、Xは従わない旨を明確にしていること、Xが今後において業務命令に従う見込みがあるとは言えず、解雇等の手段を執らなければ、Y社において継続的に業務命令違反が繰り返されることとなるが、それ自体、秩序維持の観点から相当とはいえず、Y社の企業秩序の維持のためにもXを企業外に排除すべき必要性は否定し難いこと、より軽微な懲戒処分が先行する等の段階は踏まれていないものの、業務命令が繰り返され、労働者において是正再考する機会が十分に与えられていること等も総合すれば、本件の懲戒解雇が客観的合理的理由を欠くとか、社会通念上の相当性を欠くとまではいえない。
2 本件居室の使用は、使用貸借契約にあたると解されるところ、Xは、従業員宿舎使用誓約書を差し入れたから、従業員宿舎使用規則等が使用貸借契約の内容となったものと認められ、また、Xは、○階×号室の使用に関して従業員宿舎使用誓約書を差し入れ、本件居室に転居し、Y社もそれに異を唱えた様子はないから、当該使用貸借契約の目的物は本件居室に変更されたと認められ、そして、従業員宿舎使用規則は、解雇された従業員は、ただちに宿舎をY社に明け渡さなければならない旨を定めており、従業員の身分を失ったことを使用貸借契約の終了事由と定めているといえるところ、本件で解雇が有効であるから、Xは解雇によって従業員の身分を失い、本件居室に関する使用貸借契約は終了したものと認められるから、Xは、本件居室の明渡義務を負う。
被解雇者が解雇後も従業員寮を使用している場合、仮に解雇が有効と判断されると賃料相当損害金を支払わなければなりません。
そのあたりのリスクを十分に念頭に置いて訴訟をすべきです。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。