Daily Archives: 2017年12月4日

解雇249 懲戒解雇が有効な場合の退職金の減免の程度(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、有罪判決等に基づく懲戒解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

西日本鉄道事件(福岡地裁平成29年3月29日・労判ジャーナル65号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していた元従業員Xが、Y社に対し、主位的、Y社がXに対してした懲戒解雇は懲戒事由がない上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められるものではないため無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに本件懲戒解雇後の各賃金等の支払を求め、予備的に、仮に本件懲戒解雇が有効であるとすれば、Xは上記労働契約に基づく退職金請求権を有すると主張して、退職金720万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

退職金支払請求については一部認容

【判例のポイント】

1 Y社の就業規則60条12号にいう「有罪の確定判決を言い渡され」たときには、略式命令を受け、それが確定した場合も当然含まれると解されるから、本件懲戒解雇事由1は、この場合に該当し、Xの「その後の就業が不適当と認められたとき」に当たるというべきであるから、本件懲戒解雇事由1は、就業規則上の懲戒事由に該当し、そして、本件事故やその後のXの行動は、Y社の企業秩序に直接関連し、また、Y社に対する社会的評価の低下毀損につながるおそれが客観的に認められるものといえ、その意味で、社員の品位を乱し、会社の名誉を汚すような行為であって、その情状が重いものに当たるといえるから、本件懲戒解雇事由2も、就業規則上の懲戒事由に該当するところ、本件懲戒解雇について、Y社の社内において異論がなく、労働組合からも異論が出されなかったこと、本件懲戒解雇の手続が適正でなかったことをうかがわせる事情はないこと等から、本件懲戒解雇は、社会通念上相当なものであると認められ、懲戒権を濫用したものとはいえず、無効となるものではない。

2 ・・・今後の企業秩序の維持の観点から、本件不支給規定により、Xが退職金請求権の大半を失うことはやむを得ないといえるが、他方、上記行為は業務外のものであること、Xが本件懲戒解雇以前に懲戒処分を受けたことがないこと、上記飲酒運転撲滅の取組が始まってから本件懲戒解雇までの期間は約9年間であることを考慮すると、これらのXの行為は、21年間という長年の勤続の功労を全て抹消してしまうほど信義に反する行為であったとまではいい難いこと等から、Xは、本件不支給規定にもかかわらず、退職金請求権の一部を失わないというべきである。

懲戒解雇の場合、どの程度、退職金を減額するかについては判断が非常に難しいです。

過去の裁判例は参考にはなりますが、全く同じ事案ではないことからあくまでも「参考」になるだけです。

いずれにせよ顧問弁護士と相談の上で判断すべき内容です。