解雇248 普通解雇の予備的主張とバックペイ(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、隠蔽工作等に基づく解雇無効地位確認等請求に関する事案を見てみましょう。

ミツモリ事件(大阪地裁平成29年3月28日・労判ジャーナル66号60頁)

【事案の概要】

本件は、第1事件において、Y社の元従業員Xが、解雇が無効であるとして、雇用契約上の地位確認を求めるとともに、解雇後の賃金の支払を求め、第2事件において、Y社が、Xが赤字受注及び隠蔽工作を行ったことで損害を被った、XとZ社に勤務していたAが共同して架空請求取引を行ったとして、X及びAに対する不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

第1事件:懲戒解雇は無効、普通解雇は有効

第2事件:損害賠償請求を一部認容

【判例のポイント】

1 使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則あるいは雇用契約において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要し、そして、就業規則は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知しなければならず(労働基準法106条1項)、周知性が欠ける場合には、拘束力が生じないところ、Y社は、就業規則を作成し、Xが勤務していたB営業所には就業規則を備え付けていなかったことを自認しており、そして、XとY社との間の雇用契約において、懲戒解雇に関する条件等が定められていたことを認めるに足りる証拠もないから、X営業所に勤務していたXとの関係において、Y社の就業規則の周知性は欠けていた

2 B営業所には就業規則が備え付けられていなかったため、懲戒権を欠くことになるから、懲戒解雇を行うことはできないが、懲戒解雇を相当とする懲戒事由があれば、そのことを理由として普通解雇を行うことは可能であるところ、・・・本件普通解雇が解雇権の濫用に当たるということはできない。

3 本件懲戒解雇は懲戒権を欠くものとして無効であるところ、Y社は、平成28年1月20日に陳述した準備書面において、予備的に平成26年7月28日付けでの解雇予告による解雇ないし同日付けでの解雇の意思表示をしているが、解雇の意思表示は、当該意思表示がなされた時点において効力を生じるものであり、日付を遡及して解雇することはできないから、本件普通解雇は上記準備書面が陳述された平成28年1月20日付けの普通解雇となり、Xは、平成28年2月19日までは、Y社の労働者としての地位を有していたことになるから、Y社は、Xに対し、同日までの賃金の支払義務を負うことになる。

上記判例のポイント3は理解しておきましょう。

訴訟の中で懲戒解雇の有効性があやしくなってくると、予備的に普通解雇の意思表示をすることはよくあります。

その場合には、仮に普通解雇が有効と判断された場合でも、無効と判断された懲戒解雇日から普通解雇の意思表示をした日までは雇用契約は継続していたことになりますので、その間の賃金は発生していることになるので注意しましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。