おはようございます。
今日は、固定残業代無効等に基づく未払時間外割増賃金等支払請求事件について見てみましょう。
日本保証・クレディア事件(大阪地裁平成29年4月27日・労判ジャーナル66号45頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と雇用契約を締結していたXが、時間外労働をしたのにそれに対する賃金が支払われていないとして、割増賃金の請求とそれに対する付加金の支払を命ずるよう求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、北海道小樽市に居住しており、本件当時、Y社が債権を有する顧客宅を訪問し、複数の顧客宅を回る業務に従事し、最初の訪問顧客先には自宅から直行し、最後の訪問顧客先からは自宅に直帰していた本件のXの業務は、北海道内の顧客宅を訪問して、顧客と協議するなどして債権回収を図ることにあると認められるところ、自宅と顧客宅との間の移動は、業務の前提であって業務そのものとはいえないし、その始点又は終点は自宅であり、純然たる私生活の範疇に属する区域であり、また、この移動について、移動の具体的な道筋が定められているとか、移動開始時間と移動終了時間が指定されていることを窺わせる証拠はないから、自宅と顧客宅の間の移動については、Y社の指揮命令下にあったと認めることはできず、これを労働時間と評価することはできないから、Xの自宅等と顧客宅の間の移動時間を労働時間と認めることはできない。
2 特定の名目で支払われている金銭がいわゆる固定残業代であるというためには、①当該金銭が時間外労働に対する対価として支払われていること、②当該金銭が他の部分と明確に区分されていることが必要と解されるところ、本件についてみると、Y社は、その表現こそ異なるものの、給与規程において、月30時間分の残業代相当額が賃金に含まれ、あるいは固定残業代として支払う旨を明記し、かつ給与支給明細書においては、その具体的な金額まで明記されているのであるから、賃金のうち、固定残業代として支払われている金額は、その他の賃金と金額面で明確に区分されており、上記の①及び②の要件のいずれも満たすと認めるのが相当である。
上記判例のポイント1は、直行直帰の場合の労働時間に関する考え方として参考になります。
判例のポイント2については、固定残業代が認められていますね。
ちゃんと最高裁が示した要件を前提として運用していれば裁判所も認めてくれます。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。