不当労働行為184 労組と合意することなく新制度を実施したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組と合意することなく自動車通勤手当制度を実施したことが、不当労働行為に当たらないとした事案を見てみましょう。

JXTGエネルギー事件(中労委平成29年7月5日・労判1163号88頁)

【事案の概要】

本件は、労組と合意することなく自動車通勤手当制度を実施したことが、不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 自動車通勤手当制度導入の経過についてみると、・・・従来の方法に替わる自動車通勤手当制度を実施することとしたことについては、経営上の必要性に基づく相応の合理性が認められるし、その対象も、組合の組合員のみではなく全従業員を対象として実施されたものであって、組合の組合員をそれ以外の従業員と比較して殊更差別的に取り扱ったものとはいえない。

2 Y社は、自動車通勤手当制度導入の趣旨や提案の内容等について、組合の理解を得るよう繰り返し説明を行い、約2年間にわたり相応の配慮をしながら団体交渉に臨んだものの、組合とY社との考え方の対立点について折り合いがつかなったことから、やむなく組合の合意なく組合の組合員に対しても自動車通勤手当制度を実施したものであって、交渉の過程において、殊更組合との合意の成立を阻害するような対応をしたとの事情も認められず、むしろ誠実に団体交渉に臨んでいたといえる。

3 さらに、そもそも通勤手当は、通勤に要する費用を実費弁償する性質のものであるところ、通勤手段が従業員の選択に委ねられている状況の下で、マイカー通勤を選択した者について前記のような算定基準によること自体が直ちに不合理とはいえず、また、この算定基準の具体的内容が、実費弁償の趣旨から逸脱しているとみられるような事情は、証拠上認められない。

組合員だけを殊更差別的に取り扱ったものではない以上、組合軽視ということにはなりません。

それにしても約2年にわたりこの件について団交を行ってきたようですが、気が遠くなりますね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。