解雇247 リハビリ出勤の実施方法と留意点(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、テスト出局開始から解職までの復職可能性と解職の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

NHK(名古屋放送局)事件(名古屋地裁平成29年3月28日・労判1161号46頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の職員(従業員)であったXが、精神疾患による傷病休職の期間が満了したことにより、同期間満了前に精神疾患が治癒していたと主張して、解職が無効であり、Y社との間の労働契約が存続しているとして、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、傷病休職中に行ったY社のテスト出局(一般に、試し出勤、リハビリ出勤などと称され、心の健康の問題ないしメンタルヘルス不調により、療養のため長期間職場を離れている職員が、職場復帰前に、元の職場などに一定期間継続して試験的に出勤をすることにより、労働契約上の債務の本旨に従った労務の提供を命じられ、実際に労務の提供を行ったが、テスト出局期間途中でテスト出局が中止され、それにより労務の提供をしなくなったのはY社の帰責事由によるものであるとして、テスト出局開始以後の賃金+遅延損害金を請求するほか、テスト出局の中止や解職に至ったことに違法性があると主張し、不法行為に基づく損害賠償金+遅延損害金を請求する事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社の職員が、傷病休職中にもかかわらず、労働基準法上の労働を行ったと認められる場合には、最低賃金法の適用があることになるから、本件にはおいては、結局のところ、本件テスト出局中にXの行った作業が労働基準法上の労働といえるかどうか、すなわち、XがY社の指揮命令下に置かれていたかどうかの判断によることになり、具体的には、Y社のテスト出局が、傷病休職中にもかかわらず、職員に労働契約上の労務の提供を義務付け又は余儀なくするようなものであり、実際にも本件テスト出局中にXが行った作業が労働契約上の労務の提供といえるかどうかを検討すべきことになると考えられる(最判平成12年3月9日等参照)。

2 …特に、テスト出局が、傷病休職中の職員に対する職場復帰援助措置義務を背景としていることを踏まえると、その内容として、労働契約上の労務の提供と同水準又はそれに近い水準の労務の提供を求めることは制度上予定されていないと解される。
また、テスト出局は、職場復帰のためのリハビリであり、復職の可否の判断材料を得るためのものであるとはいえ、疾病の治療自体は主として主治医が担当すべきものであり、職員からの復職の申出を受けた後、合理的な期間を超えて、職員を解雇猶予措置である傷病休職の不安定な地位にとどめおくことはかえって健康配慮義務の考え方にもとることになる。そこで、テスト出局はあくまで円滑な職場復帰及び産業医等の復職の可否の判断に必要な合理的期間内で実施されるのが相当であり、休職事由が消滅した職員について、産業医等の復職の可否の判断に必要と考えられる合理的期間を超えてテスト出局を実施し、復職を命じないときは、債務の本旨に従った労務の提供の受領を遅滞するものとして、その時点からY社が賃金支払義務を免れないというべきである。

とても重要な裁判例です。

いわゆるリハビリ出勤の問題ですが、リハビリ出勤時にどの程度の業務をさせればいいのか、また、その際の賃金は通常通り支払わなければならないのかについて考えるヒントを与えてくれています。

休職制度の運用、復職の可否の判断等については必ず顧問弁護士に相談の上、近時の裁判例の動向を踏まえて慎重に対応することを強くおすすめします。