おはようございます。
今日は、賃金体系変更協定に応じなかった組合員に対して、協定外残業および公休出勤を認めず、勤務シフトの変更に応じなかったことが不当労働行為に当たらないとされた事例を見てみましょう。
札幌交通(新賃金協定)事件(北海道労委平成29年5月29日・労判1161号89頁)
【事案の概要】
本件は、賃金体系変更協定に応じなかった組合員に対して、協定外残業および公休出勤を認めず、勤務シフトの変更に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にあたらない
【命令のポイント】
1 旧協定適用者に対し行った会社の取扱いは、賃金等の労働条件の低下を内容とする新協定に調印して会社の再建に協力してくれる新協定締結者を不利に扱うわけにはいかないとの考えによるものであり、かかる取扱いをすることは予告されていた。
また、会社は、X組合員だけでなく、同じく未調印であった非組合員11名に対しても同様の取扱いをしている。
組合が嘱託組合員についてのみ新協定に調印することを認めるよう要請したのに対し、会社が組合の一括調印でないと認めない旨の回答をしたのは、組合と組合に所属する組合員について別異の取扱いはできないと考えたからであり、そのような対応は組合に対してだけではなく、他の労組に対しても同様であった。
2 そうすると、X組合員が受けた不利益は、組合が会社との交渉で自主的な選択をし、また、組合の方針ないし状況判断に基づいて選択した結果であるというべきであって、会社のかかる行為が組合に対する団結権の否認ないし嫌悪の意図が決定的動機として行われたと認めることはできない。
3 以上のとおり、会社が、同年7月21日から同年11月20日までの間、X組合員に対して協定外残業、公休出勤及びシフト変更を制限したことは、X組合員であること又は組合が正当な行為をしたことを理由とした不利益取扱いであるとは認められないので、法7条1号に該当する不当労働行為であるとはいえない。
組合員だけをことさら不利益に取り扱っているわけではないということを明らかにできれば不当労働行為にはなりません。
今回はそれがうまくいった例ですね。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。