Daily Archives: 2017年10月27日

不当労働行為180 団交の行き詰まりを理由とする団交拒否の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、交渉が行き詰まったことなどを理由に組合の申し入れた団交に応じない法人の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

社会福祉法人方城療育園事件(福岡県労委平成29年3月10日・労判1159号90頁)

【事案の概要】

本件は、交渉が行き詰まったことなどを理由に組合の申し入れた団交に応じない法人の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・これらのやり取りからすれば、Aの育成課への復職そのものに関しては、双方の主張が根本的に対立し交渉が進展する見込みがなくなったものと見られなくもない。
しかし、育成課への復職に関する事項には、28年2月29日付け団交申入書の要求事項2に「平成28年2月以降の賃金不利益分を支払うこと」との記載もあるように、配置転換に伴う給与減額についての問題も含まれている。育成課から総務課(営繕業務)への配置転換により、Aの育成課での給与約21万5500円から1割以上の減額となることから、その点に関する代償措置や激変緩和措置などが協議されることも十分考えられるところであるが、法人が配置転換に伴う給与制度上の減額の内容を説明したことは認められるものの、上記の代償措置などの点についての協議は行われておらず、それらの点について、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みが全くなくなったとはいえない

2 Y社は、組合が団交において具体的な意見を出さなかったとも主張する。
しかし、組合は27年12月11日の第1回団交で初めて本件配転を知らされたこと、開催された3回の団交の合計時間が2時間30分程度にとどまること、及び28年1月28日の第3回団交は2月1日の復職日が迫る時期であったことからすれば、3回の協議がいずれもAの配置先の問題に集中し、組合から配置転換後の給与の減額内容やそれに対する対応及びその他の処遇といった事項について具体的な意見が出されなかったこともやむを得なかったものと考えらえる。

3 以上のように、本件団交要求に対し、Y社がこれを拒否する正当な理由があると認められないから、Y社が本件団交要求に応じなかったことは、労組法7条2号に該当する。

団体交渉を重ねていくと、会社側と組合側の主張が平行線を辿ることがありますが、だからといってあまりにも早い段階で団交を打ち切ると不当労働行為と評価されるリスクがあります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。