Daily Archives: 2017年10月11日

有期労働契約74 雇止めが有効と判断された理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、雇止めの主たる理由または動機は勤務成績、勤務方法、それらの改善可能性にあったとし、雇止めを有効とした事例を見てみましょう。

札幌交通事件(札幌地裁平成29年3月28日・労経速2315号7頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、Y社がした後記の本件雇止め等が無効及び違法であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、また、不法行為に基づき、平成27年10月1日から同28年1月20日までの賃金相当損害金67万0399円+遅延損害金の支払いを求め、同28年1月21日から本判決確定の日まで毎月27日限り賃金相当損害金18万3915円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの勤務方法は、Y社の一般的な又は勤務成績の良い乗務員とは異なり、甲駅のタクシー乗り場に駐車して、客を待ち、客を乗せて目的地まで運んだ後、客を探しながらタクシーを運転するということ(流し)をせずに、客を乗せないまま、同駅に戻り、タクシー乗り場に駐車して、客を待つ、そして、Y社からの無線による配車指示については、キャンセルボタンを押すことで応じない、というものであった。
無線による配車指示については、例えば、平成27年4月1日から同月30日までは、閉局ボタンを9回押し、休憩ボタンを111回押し、合計120回、配車指示が入らない状態を作り出した上、126回の配車指示に対し、了解ボタンを押して配車を受けたのはわずか5回にとどまり、キャンセルボタンを押して配車指示拒絶をしたのは121回にものぼっていた。
これらのような勤務方法の結果、平成27年7月27日から同年8月26日までの期間については、Xの走行距離及び売上は、Y社が定めた目標の走行距離及び売上に届いたことがなかっただけでなく、百合が原営業所の乗務員の平均の走行距離及び売上にも届いたことがなく、特に、Xの売上は、百合が原営業所の乗務員の平均の売上の半分に満たないことが多かった

2 ・・・以上の事情によれば、Xにおいて、平成27年9月30日の期間満了時に、本件労働契約3が更新されると期待することには、その程度は強くないものの、合理的な理由があるというべきであり、本件労働契約3は、労働契約法19条2号に該当するものである。

3 ・・・以上のような、Xの勤務成績が極めて悪かったこと、Xの勤務方法が一般的な又は勤務成績の良いY社乗務員と異なっていたこと、Xの勤務成績及び勤務方法について改善可能性がなかったこと、Xは雇用期間を6か月とする有期労働契約が2回更新されたにとどまっていたこと、平成26年6月頃又は同年7月頃のY社から日本交通労働組合に対する説明などによれば、X以外で更新を拒絶された嘱託社員として証拠上認められる者が1名であることといった事情、Xの主張及び本件全証拠に照らしても、本件雇止めには、客観的合理性も社会通念上の相当性も認められるというほかない。

2号事案で、これだけの事情がそろえば、雇止めは有効と判断されます。

多くの場合、ここまでの事情がそろう前にしびれを切らして解雇してしまうのです。

期間途中の解雇は期間満了による雇止めよりも要件が厳しいので判断を誤らないように気をつけましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。