おはようございます。
今日は、定年延長後の地位確認を定年前に求める訴えに確認の利益はないとされた裁判例を見てみましょう。
学校法人X事件(大阪高裁平成29年4月14日・労経速2316号26頁)
【事案の概要】
Xは、Y社との間で労働契約を締結し、Y社の設置、運営するA大学人文科学研究所において教授として研究教育活動に従事する者であり、満65歳に達した年度の3月31日は平成30年3月31日であるところ、本件は、Xが、Y社の就業規則附則1項に規定する「大学院に関係する教授」(大学院教授)と同様に70歳まで定年延長を受ける権利があるなどと主張して、Y社に対し、平成30年4月1日から平成35年3月31日まで労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める事案である。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 将来の法律関係の確認を求めることは、不確定な法律関係の確認を求めるものであって、現在における紛争解決の方法としては原則として不適切と考えられる。しかし、将来の法律関係であっても、権利侵害の発生が確実視できる程度に現実化し、かつ、侵害の具体的発生を待っていては回復困難な不利益をもたらすような場合には、当該法律関係の確認を求めることが紛争の予防・解決に最も適切であるから、これを確認の対象として許容する余地があるものと解される。
2 ・・・仮にA大学の「大学院教授」がかかる権利を有しているとしても、当審の口頭弁論終結日である平成29年3月1日からXの定年時点である平成30年3月31日までには1年余りの期間があり、その間、XとY社との間の労働契約関係・契約内容に変更が生じる可能性やA大学における定年の制度に変更が生じる可能性がないとはいえないから、Xが「大学院教授」と同等に定年延長を受けられるか否かを判断するにはなお不確定要素が多いといわざるを得ない。
・・・そうすると、いまだ、Xの将来の労働契約上の権利に対する侵害発生が確実視できる程度に具体化しているとはいえないから、本件訴えは、不確定な法律関係の確認を求めるものとして不適法というべきである。
先回りして紛争を未然に防ぎたいという気持ちはわかりますが、上記判例のポイント1の規範のとおり、将来の法律関係の確認は要件が厳しいため、原則的には紛争が起きた後に提訴することになります
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。