不当労働行為176 労組委員長らの発言を記載した文書を掲示・回覧したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、覚書締結交渉の膠着状態を打開しようとして労組委員長らの発言の言葉じりを捉えた文書を掲示または回覧した措置につき、不当労働行為に該当するとされた事案を見てみましょう。

京都生協事件(中労委平成29年3月1日・労判1158号154頁)

【事案の概要】

本件は、覚書締結交渉の膠着状態を打開しようとして労組委員長らの発言の言葉じりを捉えた文書を掲示または回覧した措置につき、不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

初審京都府労委は、不当労働行為にあたらないと判断した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・以上の記載は、いずれも本件交渉における執行部の対応を批判する内容を含み、26年度覚書が締結できない責任が専ら執行部にあるかのような行き過ぎともいえる部分があるといえるのであるが、その多くは、Y社の立場からみた意見の表明やその前提となる事実等の指摘として許容される範囲に収まっているとも判断できる余地がないわけではない。

2 以上によれば、本件各書面提示のうち、Y社が、組合員を含むパート職員に対し、「パート労組執行部は『私たち(労組執行部)はこの内容で理解できるが、代議員に納得させる自信がないので、人事教育部が代議員会に出席し説明してほしい。』と述べました。」との記載がある26.3.6書面を提示したことについては、たとえ同提示の目的として、雇用関係の終了というパート職員の不利益を生じさせないこと等のために26年度雇用契約書の提出を呼び掛けることが含まれているとしても、本件交渉の膠着状態を打開し、本件交渉を有利に進めるために、いまだ同年度覚書の締結に至っていないのは、執行部の対応に問題があるからであるかのようにパート職員に印象付け、執行部を批判にさらさせることにより、X組合に対し同年度覚書締結に関する協議の再開に応じるよう圧力を掛け、X組合の運営に影響を与えようとしたものといわざるを得ず、労組法7条3号の支配介入に当たる。

初審と異なる判断です。

個人的には中労委の判断の方がしっくりきます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。