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今日は元従業員に対する競業禁止の合意等に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。
リンクスタッフ元従業員事件(大阪地裁平成28年7月14日・労判1157号85頁)
【事案の概要】
本件は、Y社が元従業員であったXに対し、Y社・X間では退職後一定期間は同業他社に就職しないこと等を内容とする競業禁止の合意があったにもかかわらずXはこれに違反した、Xは他の退職従業員と共謀してY社の事業の妨害を図ったなどとして、債務不履行ないし不法行為に基づき、損害賠償を請求する事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 退職後の競業禁止の合意は、労働者の職業選択の自由を制約するから、その制限が必要かつ合理的な範囲を超える場合は公序良俗に反し、無効である。
本件についてみると、Xはいわゆる平社員にすぎないうえ、Y社への在籍期間も約1年にすぎない。他方、競業禁止義務を負う範囲は、退職の日から3年にわたって競業関係に立つ事業者への就職等を禁止するというものであり、何らの地域制限も付されていないから、相当程度に広範といわざるを得ない。
Y社は、業務手当の中には、みなし代償措置である2200円が含まれているとも主張するが、Xは、業務手当の中には、みなし代償措置が含まれているとの説明を受けたことはないと供述しているうえ、仮にこれが代償措置として設けられているとしても、その額は、Xの在籍期間全部を通じても総額で3万円ほどにすぎず、上記のような広範な競業禁止の範囲を正当化するものとは到底言えない。
そうすると、本件誓約書による競業禁止の範囲は合理的な範囲にとどまるものとはいえないから、公序良俗に反し無効であり、競業禁止の合意に基づく請求は理由がない。
このような事情であれば、訴訟を起こす前から結論は目に見えています。
訴訟をやるだけ時間とお金の無駄です。
訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。