おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。
今日は、大量観察方式により不当労働行為の成立が否定された事例を見てみましょう。
明治(不当労働行為)事件(中労委平成29年1月11日・労経速2314号3頁)
【事案の概要】
本件は、本件Xらが、同人らの行う組合活動を嫌悪したY社は、Y社の人事制度の下、本件Xらの平成元年度から5年度における昇格・昇給を他の従業員と差別して不利益に行い、 その結果、組合の運営に支配介入したことは労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当すると主張して、6年7月6日、都労委に対し、救済を申し立てた事案である。
【労働委員会の判断】
本件各再審査申立てをいずれも棄却する。
【命令のポイント】
1 労組法第27条第2項は「労働委員会は、前項の申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から一年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることができない」と規定し、これを受けた労委規則第33条第1項第3号は、申立てが行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、申立てを却下することができる旨規定している。
これらの規定の趣旨は、不当労働行為としてその救済が申し立てられる事件が行為の日から1年を経過している場合には、一般に、その調査審問に当たって証拠収集や実情把握が困難になり、かつ、1年を経過した後に命令を出すことはかえって労使関係の安定を阻害するおそれがあり、あるいは命令を出す実益がない場合もあることから、このような制度上の制限を設けたものと解される。
そして、上記の「継続する行為」とは、個々の行為自体は複数であっても 全体として1個と見ることができる不当労働行為が継続している場合、すなわち、継続して行われる一括して1個の行為と評価できる場合をいうが、この範囲をあまり緩やかに解すると上記各規定の趣旨を没却することになるから、各行為の具体的な態様、目的、効果及び各行為の関連性等を総合して、各行為が一体のものとして1個の行為と評価できるか否かによって判断すべきである。
2 本件申立人らを含む申立人ら集団が、昭和30年代後半より、生産合理化活動や新職分制度などの会社の施策に反対する活動を行っており、労使協調路線を採るインフォーマル組織との間で、組合支部役員選挙等において激しく対立する状況にあったこと、インフォーマル組織の推薦する者が組合支部執行部を担うようになった後においても、申立人ら集団に属する者が同役員選挙等に立候補し、あるいはこれを支援するビラ配布等の活動を行っていたこと、これらの活動と並行して、会社を相手方とする組合員の解雇や配転等に関する裁 判等の傍聴や署名等の支援活動を行っており、「三つの裁判を支援する全国連絡会」が結成され、後に「全国連絡会」が結成され市川工場事件や本件の救済申立てにもつながっていることに加え、昭和41年2月の戸田橋工場における民主化同志会の結成以降、全国の各支部において一斉にインフォーマル組織が結成されており、民主化同志会の会合に市川工場の工場長を始めとする他の工場の職制らが出席していたり、戸田橋工場の課長が大阪工場にて組織化の方法を教示していたことなどからすれば、会社がその施策に賛同するインフォーマル組織の結成に関与していた疑いがあるというべきこと、さらに、会社の要職にあった者が、福岡工場での会議において、本件申立人らの活動である「三つの裁判を支援する全国連絡会」の 結成や、申立人ら集団を指すと思われる「民青」の会社内の人数の推移等 について報告していたことも認められ、会社においても、申立人ら集団 (本件申立人らや市川工場事件申立人らを含む。)について1つの集団として把握していたことがうかがわれる。
これらの事情を前提とすれば、本件申立人らを含む申立人ら集団が組合活動の面においては1つの集団であったと見た上で、人事考課成績等に関する集団的考察を行うことは、本件で不当労働行為の成否を判断にするに当たってはやはり有益な面がある。
まずは上記命令のポイント1の規範を押さえましょう。
その上でいかなる場合であれば「継続する行為」と認定されるか、この事例を参考にしてください。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。