おはようございます。
今日は、組合員2名に対する配転命令の有効性と不当労働行為該当性に関する事案を見てみましょう。
廣川書店(配転)事件(東京地裁平成29年3月21日・労判1158号48頁)
【事案の概要】
本件は、東京都文京区所在の出版社であるY社の従業員であり、労働組合の組合員であるX1及びX2が、Y社から、平成28年2月1日付けで、埼玉県所在のZ分室で勤務するように命じられたこと(本件配転命令)について、これは就業場所の変更を伴う配転命令であるところ、Y社には配転を命じる権限がないので、本件配転命令は法的根拠を欠き違法、無効である、そうでなくとも、本件配転命令は裁量権の濫用に当たり、又は労働組合法7条1号所定の不当労働行為に当たり違法、無効であって、不法行為を構成すると主張して、Y社に対し、それぞれ、Z分室に勤務する義務のない地位にあることの確認と、精神的苦痛の慰謝料50万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
1 Y社は、X1に対し、30万円+遅延損害金を支払え
2 X2が、Yに対し、Z分室に勤務する義務のない地位にあることを確認する。
3 Y社は、X2に対し、30万円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 XらがZ分室で行っている業務は、それらが業務の全てであるかどうかは別にして、基本的に従前と同様の内容であるから、それらを敢えて本社社屋から片道約1時間かかるZ分室まで赴いて行う意味があるのか、大いに疑問がある上、Y社が命じた勤務形態が、午前9時に本社社屋に出社し、タイムカードを打刻してからZ分室に向かい、同所で作業後、午後5時には本社社屋に戻るということであり、Z分室への往復に要する2時間程度の間は業務が処理できず、停滞を余儀なくされることも勘案すれば、本件配転命令は明らかに不合理であり、Z分室にXらを配転する業務上の必要性があるとは容易に認めることはできず、むしろ、このような配転には業務上の必要性がないという推定が働くというべきである。
2 ・・・加えて、Xらは外気を壁や扉で遮断する措置が講じられていない倉庫の一角という、およそ事務作業をするのに適さないと思われる作業場におり、同所は、Xらが平成28年3月10日に調査した際には、暖房の近くでも摂氏14度しかなく、そのことを伝えられたY社がヒーターを設置した経緯があることからしても、本件配転命令に当たってのY社の準備等はいかにも場当たり的であって、この点も、本件配転命令の不合理性を示すものといえる。
3 しかも、本件配転命令には、他の組合員の継続雇用に関する非組合員との差別的取扱いや団交拒否について、Y社に対し、複数の不当労働行為救済命令が出されている中で発せられたという経緯があり、その経緯からは、Y社が労働組合を嫌悪し、本社社屋から組合員を排除するという不当な目的をもって本件配転命令を発したことが推認されるというべきところ、・・・この推認を覆すような証拠は見当たらず、前述のとおり、業務上の必要性が認められないことも、この推認を支えるものである。
わかりやすく配転の必要性がないケースですね。
これではさすが無効です。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。