労働災害92 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求と過失相殺(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、作業中の怪我に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

三興運送事件(大阪地裁平成29年3月1日・労判ジャーナル33頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社の安全配慮が不十分であったため作業中に負傷したとして、Y社に対し、不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社の損害賠償責任を認める。

3割の過失相殺を認める。

【判例のポイント】

1 Y社においては、作業中の手足を挟まれる危険について特に対策を講じておらず、作業員に安全靴の装着を求める取引先の所に行く場合には安全靴を装着することになっていただけであったところ、Xは、本件事故当時、年平均90時間超の超過勤務を恒常的に行っており、また、Xは、労働安全衛生規則5条に基づく安全管理者として講習を受けていたことはあったが、特に会社の中で安全管理を行うような役職に就いていたわけではなく、また、本件昇降機は、自動停止装置を付けることができないものであり、Xは、本件事故当時、安全靴など装着しないで作業をしており、本件昇降機に乗って積み荷を降ろした後、本件昇降機に乗ってハンドリフト(積み荷を運ぶ機械)を支え、コントローラーを操作して上昇していた際、たまたま自分の左足が荷室側にはみ出ており、第1指が本件昇降機と荷室の間に挟まってしまい、本件事故が発生したこと等から、Y社には、本件事故につき過失があったといえるから、不法行為に基づく損害賠償請求責任を負う(厳密には、Xの上司で安全管理者たるべきY社従業員に過失があり、Y社は、その使用者責任を負うと解される)。

2 Xは、安全管理者として講習を受けたとはいえ、会社内で具体的に何らかの措置を講じるべき立場になく、また、講習の内容も不明であるから、本件事故を防止できるだけの知識を付与されていたとは認め難く、また、Xは、本件事故当時、相当長時間の超過勤務をしていたため注意力が低下していたと主張し、本人尋問でも、当時12月の寒さ等と相まって注意力が低下していたなどと供述するところ、それも首肯されるところであるが、Y社は、これを否定し、事故前にXからY社に過労を訴えるようなことはなかったと指摘するが、Y社の従業員は当時概ね長時間労働に従事していたことが窺われるから、Xがそのような訴えをしなかったとしても不自然でなく、・・・Xにも本件事故について過失があるとはいえ、過失割合はせいぜい30%と言うべきである。

3割の過失相殺を大きいと見るか否かは判断が分かれるところですね。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。