おはようございます。
今日は、就業規則改訂の無効及び差額賃金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。
ケイエムティコーポレーション事件(大阪地裁平成29年2月16日・労判ジャーナル63号43頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xらが、主位的請求として、Y社に対し、平成11年4月1日施行給与規程に基づいて、本件給与規定に基づいて計算された賃金と現実にY社から支給された賃金との差額賃金の支払、本件給与規定に係る賃金額を前提として、平成11年4月1日施行の退職金支給規定に基づいて、同退職金の支払を求め、そして、Bが、Y社に対し、深夜勤務に係る時間外割増賃金の支払とともに、労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求め、予備的請求として、Xらが、Y社に対し、平成12年給与システム及び平成22年10月の給与システムに基づいて差額賃金の支払及び退職金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
就業規則の改訂は無効
→Xらの主位的請求をすべて認容
【判例のポイント】
1 Y社が、仮に、就業規則の不利益変更に該当するとしても、Xらは、本件誓約書に署名押印していることから、同不利益変更に関して、Xらの同意があった旨主張するが、本件誓約書への署名押印というXらの行為がXらの自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはおおよそ認められない。
2 平成20年就業規則及び平成21年就業規則と平成11年就業規則及び本件給与規定を比較すると、同変更による労働者側の不利益の程度は大きいと認められるところ(変動の具体的な基準や決定方法等も規定されておらず、Y社の恣意的な運用を許す内容といわざるを得ない)、他方で、同変更に至る経緯、同変更の必要性等その合理性を基礎付ける個別具体的な事実に関する事情が明らかとはいえず、同変更については、合理性があったとは認められないから、同不利益変更は、無効である。
労働条件の不利益変更をする場合には、近時の判例の傾向を踏まえた上で慎重に行いましょう。
特に労働者からの同意については非常に厳しくその有効性を判断されますのでご注意ください。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。