おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。
今日は、ユニオン等の会社に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。
引越社事件(名古屋地裁平成29年3月24日・労判ジャーナル63号19頁)
【事案の概要】
本件は、X組合の支部長であるAが、Y社によって、名誉を毀損され、かつ、プライバシーに属する情報を公開されたなどと主張し、また、X組合が、Y社の上記行為は、ユニオンに対する不当労働行為に当たると主張して、いずれも不法行為に基づき、慰謝料ないし無形の損害として、Aにつき300万円、X組合につき100万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
Y社はAに対し30万円+遅延損害金、X組合に対し20万円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 Aは、X組合Y社支部の支部長の地位にあり、X組合とY社の紛争について大きな影響力を持っていること、公表された情報の種類は、前科や個人の内面に関わる思想などプライバシーに係る情報の中でも保護の必要性が高いものではなく、また、住所については、市町村までの情報にとどまっていること、Y社自らが広く第三者に公表したものではなく、報道機関である物流タイムズ社に対し、同社からの取材を受ける過程で伝達したにすぎないことが認められ、平成27年2月以降、X組合とY社との間には激しい対立があり、運送業界の業界紙を発行する物流タイムズ社がこれに関心を抱き、少なくとも支部長の地位にあるAの個人情報を伝達することの社会的な意義、必要性は高いと認められるから、Aの個人情報を公表されない法的利益がこれに優越するとはいえないこと等から、Y社が、物流タイムズ社に対し、Aのプライバシーに係る情報を公表したことについて、不法行為は成立しない。
2 本件掲示行為は、Aの名誉を毀損するものであり、これにより、Aが精神的苦痛を被ったことが認められ、そして、本件張り紙はY社及びY社グループ会社の店舗という特定の場所に掲示されたものであり、新聞、週刊誌、書籍などのマスメディアによる名誉棄損と異なることを考慮した上で、本件張り紙が掲示された店舗数及び掲示されていた期間等から、Aに対する慰謝料は30万円と認めるのが相当である。
3 本件掲示行為について、本件張り紙は、読み手であるY社の従業員をして、X組合への参加を躊躇させ、又は、既にX組合に加入済みの組合員をして、同組合との信頼関係を低下させるおそれがある内容であること、Y社は、現に、X組合から脱会した従業員との間では、個別の和解を成立させるという切り崩し的な手法を用いており、本件掲示行為についても、X組合の活動を妨害し、又は、X組合の組織の弱体化を図るというY社の意図が推認できることなどの事情が認められること等から、Y社による本件掲示行為は、X組合に未加入の従業員に対しては、同組合に加入するか否かという、既にX組合に加入している従業員に対しては、同組合を脱退するか否かという、労働者ないし組合員が自主的に判断して行動すべき事柄に対する支配介入行為に当たると認めるのが相当である。
慰謝料額でいうとこの程度です。
名誉棄損の訴訟は、金銭的には見合わないため、目的は「お金じゃない」ということを明確にしておくべきですね。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。