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今日は、客室乗務員の期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。
デルタ・エアー・ラインズ・インク事件(大阪地裁平成29年3月6日・労判ジャーナル63号31頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で、平成17年10月16日、業務を航空機の客室乗務員とする期間の定めのある労働契約を締結し、これを約1年ごとに継続的に更新してきた元従業員Xが、平成26年12月5日付でY社から解雇され、平成27年3月31日以降の契約更新も拒否されたため、同解雇が無効であり、また労働契約法19条により労働契約は更新したものとみなされると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成27年4月以降の未払賃金及ぶ賞与等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
解雇無効
【判例のポイント】
1 ①そもそもY社が人員削減の必要性として挙げる本件サービス変更は、平成27年1月1日から実施するものであるのに対し、本件解雇は平成26年12月5日付けでなされたものであり、本件サービス変更と本件解雇の日が一致しているとはいえないこと、②Y社は、本件サービス変更の結果、運航時間総数が月5060時間になると見込まれるとして、削減する人員を20名と算出したと主張しているところ、そもそもIFSRの契約において、月70時間のACFHが保障されているわけではないこと、③その点を措くとしても、本件サービス変更の月である平成27年1月の運航時間総数は5060時間を割り込んでいるものの、同年2月及び3月は、月5060時間を超過しており、この3か月の運航時間総数の平均値は月5164時間であって、Y社見込み時間数である月5060時間を上回っていること、 ④本件サービス変更の結果、5名で機内サービスを提供することが可能であるとしても、従前6名の乗務員が乗務していたことに鑑みれば、過渡期の対応として、5名を超える乗務員を乗務させる余地が全くないとも認め難いこと、⑤Y社は、本件解雇に当たり、本件契約の終了日までの基本給を支払っており、本件解雇をしなくても、Y社に新たな経済的負担が生ずるものでもないこと、以上の点が認められ、これらの点に鑑みると、本件サービス変更がY社の経営判断に属するものである点を考慮したとしても、これをもって、平成26年12月の時点において、平成27年3月の契約期間満了を待たずに、IFSRを8名削減しなければならない程度に切迫した必要性があったとまでは認められない。そして、全証拠を精査しても、このほかに契約期間が満了する前にXを解雇しなければならなかったことを根拠付ける具体的な事情があったことを認めるに足りる的確な証拠は認められない。
以上によれば、Y社の上記主張は理由がなく、本件解雇は無効であると解するのが相当である。
2 Y社は、Xの賃金は、最低保証のない完全歩合制であるから、現実の乗務がない以上、賃金額は0円となる旨主張する。
しかしながら、そもそもXが現実に乗務していないのは、Y社がXの就労を拒否したからであって、Y社が拒否しなければ、Xは、平成26年12月以降も乗務員としての業務に従事していたと認められる。
したがって、Y社は、Xに対し、民法536条2項により、賃金支払義務を負っていると解するのが相当である。
3 Y社において、賞与の支給に関して定めた契約条項や支給規定は見当たらず、Y社がこれまでXに対して基本給3か月分に相当する額の賞与を支給してきたとの事実をもって、賞与支給に関する黙示の契約が成立したと解することもできない。
また、賞与については、プロフィットシェアと異なり、一律に支給率等を定めた上で全従業員に対して支給されていたことを認めるに足りる的確な証拠は認められない。そうすると、Xは、Y社に対し、賞与の支払を求める請求権を有しているとはいえない。
整理解雇の必要性が否定された事案です。
また、上記判例のポイント2の「最低保証のない完全歩合制」は労基法上は採り得ない賃金体系なので、ご注意を。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。