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今日は、団交内容を第三者に漏洩しないなどの団交ルールに労組が同意しないことを理由として団交に応じない会社の対応が不当労働行為とされた事例を見てみましょう。
アート警備事件(埼玉県労委平成29年3月23日・労判1154号92頁)
【事案の概要】
本件は、団交内容を第三者に漏洩しないなどの団交ルールに労組が同意しないことを理由として団交に応じない会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 使用者の誠実交渉義務の具体的内容は、会見し協議する義務を本則とするものと言うべきであり、書面の交換による方法が許される場合があるとしても、それは当事者が特に合意したとか、直接話し合う方式を採ることが困難な特段の事情がある場合などに限られると言うべきである。
2 Y社は、組合の「コンプライアンスに不安があること」を、本条件の正当理由として主張しているが、この点に関する求釈明に対してはY社から具体的な釈明がなされなかった上、事前協議への申入れにすら応じないことについては、何ら主張も立証もなされていない。
このような経緯に照らせば、Y社が本条件を団体交渉開催の条件とし、これに合意しないことを理由に事前協議を含む団体交渉を拒否したことは正当な理由のない団体交渉拒否と言うほかない。しかもルール策定のための協議にすら応じないY社の姿勢は、そもそも合意形成の意思のない団体交渉権否認の態度であると言わざるを得ず、Y社の団体交渉拒否の違法の程度は著しい。
3 Y社が団交において録音、撮影を行わないことを団体交渉開催の条件とし、これに合意をしないことを理由に団体交渉を拒否したことは、正当な理由のない団体交渉拒否であり、かつ、その違法の程度が著しいことは、前記の場合と同様である。
4 弁護士資格を有する代理人を議事進行役に限定することを団体交渉開催の条件とすることには何ら正当な理由はなく、同条件に応じないことを理由とした団体交渉拒否は許されない。
上記のようなさまざまな条件をつけたくなる気持ちはわかりますが、いずれも団交拒否の正当な理由とはならないため、これを理由に団交拒否することは不当労働行為にあたります。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。