おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。
今日は、退職する労働者への損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。
美庵事件(大阪地裁平成28年12月13日・労判ジャーナル61号24頁)
【事案の概要】
本件は、エステティックサロンを営むY社が、Xに対し、就業規則では退職する際には3か月前に退職届を提出しなければならないとされているにもかかわらず、Xが同義務を履行せず、一方的に1週間後に退職する旨の退職届を提出し、引継ぎも行っていないことが債務不履行に該当する、あるいは、Y社とXとの間で退職時期に関する合意が成立したにもかかわらず、就業規則の定めに反して一方的に退職届を提出し、就労していないことが不法行為にも該当するとして、損害賠償を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 労働基準法の趣旨に照らせば、労働契約から離脱する自由を保障することで労働者の保護を図っているということができ、民法627条1項の期間については、使用者のために延長することはできないものと解するのが相当であり、退職する際には3か月前に退職届を提出しなければならないとする規定は無効である。
2 労働者の急な退職や病気等による欠勤という事態はいつでも生じ得る事態であり、様々な事態が生じても業務を遂行できる勤務シフトを設定することは使用者の権限であり責任でもあることからすれば、賃金カットがされることはともかく、労働者に損害賠償責任を負わせるためには、例外的な特段の事情があることが必要と解されるが、そのような特段の事情があるとは認められない。
民法627条1項では以下のとおり規定されています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
今回の裁判例では、この規定は強行法規だと解されています。
多くの会社の就業規則では、1か月前に退職届を提出しなければならない等と規定されていますが、この裁判例によれば、無効となってしまいます。
実務対応は、必ず顧問弁護士に相談をしながら行いましょう。